【起業事例】乳がん経験をもとに59歳で起業。医療向けウィッグのサロンを開設

インタビュー

がん闘病中の人たちが快適に使える医療向けウィッグの販売を手がける武田さん。自身の乳がん罹患の経験からアピアランス(外見)ケアの重要性を感じて起業を決意。起業の準備や楽しさについて聞いてみました。

武田さわ子 プロフィール 共立女子大学大学院修了。アパレルメーカー、横浜人形の家学芸員、日本人形玩具学会理事、木の玩具専門店のアドバイザー、服飾専門学校の講師、パソコン教室の講師などに従事。 2009年 乳がんを発症。手術、抗がん剤治療、再手術を受ける。 2011年 パソコン講師として仕事に復帰。 2015年 自らの乳がん罹患体験を生かしたいと、乳がん罹患者向け補正下着などの製造販売を行う会社に転職。 2017年 アピアランスケアの情報提供と医療向けウィッグ「Brilliant Breeze」販売のため、株式会社明和企画を設立(代表取締役は夫の武田明)。現在に至る。

乳がんの経験を役立てたいという思いから決意し59歳で起業

起業を考えるようになったのはいつ頃からですか?

52歳で乳がんになり、手術や抗がん剤治療を経験しました。 しばらくは自分自身の治療のことだけで精いっぱいという状況でしたが、術後5年が経て、少し落ち着いてきた57歳の頃から、「今元気でいることに感謝し、私の経験を他の患者さんの為に役に立てたい」という思いを抱くようになり、起業について考えるようになりました。起業することを決めたのは59歳のときで、そこから半年ほどで会社を立ち上げて事業をスタートし、約2年がたちます。

がんとの闘病中に救われたウィッグの存在

現在の事業内容に決めた理由をお聞かせください。

闘病する中で「救われた」と感じたのは、抗がん剤治療を受けているあいだも友人と食事や旅行に出かけるなど、比較的楽しく日々を過ごせたことです。 そして、それはウィッグのおかげで、人目を気にすることなく外出できたことが大きかったと思います。 今なお、闘病中の人たちがストレスなく着用することができて、お手入れがしやすいウィッグの情報が多いとは言えません。私のまわりでも、欲しい情報が見つからない、納得のいくウィッグに出会えないという経験をした方がたくさんいらっしゃいました。 私は、ウィッグプロデューサー・鍛紀子さんのウィッグを使っていたのですが、「多くの人にこのウィッグを知ってほしい。それを伝えることを仕事にしたい」と考えるようになりました。鍛さんのウィッグはおしゃれなスタイルで、被っていてストレスがありませんでした。何よりも、脱毛によるウィッグのサイズ調整や日頃のシャンプーなどの手入れが自分で簡単に出来ました。 ある日、以前から交流のあった鍛さんに話したところ、「医療向けのウィッグで社会貢献したいと思っていたけれど、患者さんに紹介する方法がわからずにいたので、ぜひ武田さんの経験をもとにして、困っている患者さんに私のウィッグを紹介して欲しい」と言ってくださいました。そこからは夫も含めて3人で色々と計画を進めました。

業界について見識のある夫に協力依頼。夫婦協力のもと自宅サロンを開設

起業を決めた後、どのような流れでサロンを開設されたのですか?

まず、どのような形で事業をスタートするかについて、税理士さんや弁護士さん、そして医療業界で長く働いてきた夫に相談をしました。 当初は個人事業主やNPOとして活動することも考えましたが、医療関係者の方や患者さんの信頼を得るためと、クレジット決済への対応などを考え、株式会社を設立することにしました。 また、私は病院を訪問した経験がないので、製薬会社や医療法人など医療業界に46年間従事してきた夫に代表を務めてもらい、病院訪問などは一緒に行うことも決めました。 夫は病院訪問の経験も多く、病院ごとの規則や担当窓口の違いなどを理解していたりするので、この部分は大きな強みになっています。 パンフレットの作製、ウィッグの仕入れや備品購入などサロン開設を進めながら2017年の4月に法人登記をしました。その後は銀行の法人口座の開設やクレジットカード決済対応の手続き、商標登録の申請などを経て、株式会社としてスタートしました。病院等を訪問し、積極的に弊社の紹介をさせて頂くようになったのは7月頃でした。 本社およびサロンは、自宅の2階を使うことにしました。起業を考えた時期にちょうど自宅を建て替えていて、サロンとして使う部屋を確保できたのはタイミングがよかったなと思います。

起業後の営業活動は病院訪問や試着会の開催。月15人程度の相談者に対応

サロンに足を運んでもらうために、どのようなことをしましたか?

まずは病院など医療関係者の方にあいさつにうかがい、「自分の経験をもとにアピアランスケアの情報提供をする会社を作りました」という話をして、パンフレットを置かせていただきました。最初のお客さまがサロンにいらしたのは、病院訪問を始めてから1カ月ほどたったときでした。 現在は、定期的にいくつかの病院を訪問して、試着会・相談会を開催しています。相談にみえる方は月平均で10〜15人、そのうちの1〜2割くらいの方と、パンフレットやホームページなどをご覧になった方が、サロンまでお越しいただいている状況です。 なかには都内から横浜市戸塚区戸塚町の当社サロンまでいらっしゃる方もいて、サロンまで足を運んでくださったお客さまには、大変ご満足いただいています。 また、がんについての勉強会や患者会などに参加し、病気について勉強することにも重点をおいています。 私自身、乳がんの経験はありますが、他のがんのことはわかりませんし、医療の世界は日々、進歩しているので、私が経験した治療と今の治療も違います。私は医療者ではありませんので、治療に関してのアドバイスは出来ません。しかし、最新の医療情報を知っておくことも、闘病中の方に安心してウィッグを購入していただくためには大切だと思っています。 今後は、ウィッグを必要としている方に、もっと充実した情報を届けられるように、病院での無料相談会や試着会、患者会でのアピアランスケアに関するミニ講演会なども増やしていきたいと考えています。

試着したお客さまの表情が明るくなる瞬間がうれしい

起業をしてうれしかったこと、また大変だったことはありますか?

乳がん罹患という経験が、他の人の役に立っていることが何よりもうれしいです。 つらそうな表情で来店された方が私と雑談することで気持ちがほぐれ、ウィッグの試着を楽しんでくださっている様子や、不安な気持ちでいっぱいの方がウィッグをつけた途端に明るい表情になるのを見ると、ほっと心が和らぎます。ご本人が元気になることで、同行されたご家族にも安心していただけます。 また、病気について勉強するなかで、学んだことが自分の身になっているのを実感できたときや、仕事を通じて知り合った医療者や患者さんとの交流の輪が広がっていくこともうれしいですね。 大変だったのは、実績がない状態でクレジットカード決済の承認を取ったことです。しかし、決して安い商品ではないので、現金払いのみというのは、お客さまにとって負担も大きくなってしまいます。「少しでも購入しやすくなれば」との思いから、カード決済の導入を決めました。 また、通常であればデメリットになってしまう部分を、メリットに変えられるように心がけました。サロンが住宅地にあるので、都心の駅近くの店舗のように、アクセスが良いわけではありません。 でも、静かな住宅地だからこそ、お客さまは友だちの家に遊びに行くような感覚で、人目を気にせずに足を運び、ゆっくりとくつろいでいいただけます。 大きな窓から庭の木々や季節の花を眺めることができたり、気候のよい時期には庭でお茶をサービスすることができるのは、当サロンの魅力だと思っています。

今持っている人脈を生かすことが大切

起業の準備として「やってよかったこと」「しておけばよかったこと」はありますか?

起業にあたっては、人脈がとても大切だと思います。私は起業する際に、たくさんの友人・知人に協力をお願いしました。 自毛のカットが必要な場合に対応していただける美容師さんや、肌荒れなど万が一のトラブルが起きたときに相談できる開業医の友人、治療中にも使えるネイルについてレクチャーしていただけるネイリストさん、患者さんの生活に役立つアロマテラピーや薬膳の知識を持った知人などです。 私だけの力ではできないことがたくさんあります。それを補ってくれるのが、各分野の知識や実務力を備えたこれらの方々で、私の活動を多方面から支えてくださっています。 しておけばよかったという意味では、起業のタイミングが10年若ければ、「私自身がもっといろいろな資格を取ることができたのに…」と思うことはあります。 でも、それはしかたのないこと。起業してから「ピンクリボンアドバイザーの初級・中級」・「BEC(乳がん体験者コーディネーター)」等の認定を取りましたが、私が今から新たに勉強してそれ以上の資格を取るよりも、すでに資格を持っている方に協力していただくほうが現実的なので、今あることを最大限に生かしていきたいと考えています。そして、それを実現できる友人・知人の協力には心から感謝しています。

大手企業とは違う「自分にしかできないことは何か」を考えた起業を

これから起業したいと考えている人たちにメッセージをお願いします。

サロンを開設してから、およそ2年がたちました。その間に、100名を超える方のご相談を受け、お買い上げにつながるお客さまも着実に増えています。 きちんとした仕事をしていれば、結果はおのずとついてくると思うので、今は焦らずにていねいな仕事を心がけています。 人生半ばを過ぎての起業は、その人の生き方が現れると思います。私は、乳がんの経験を通して元気に生活出来ていることへの感謝と、今不安で一杯の方をピアサポートの立場から「不安を安心に変えるお手伝い」をしたい。との思いが起業につながりました。 大手の同業他社と競っても勝ち目はありません。そうではなく、がん経験者の私だからこそできることは何かを考え、それを大切にしています。経験者である私と話をしたい、私からウィッグを買いたい…。お客さまに、そんな気持ちになってもらえるようなサロンづくりを心がけています。。 どのような人にも、その人ならではの経験・体験があるはずです。自分にしかできないこと、自分だからできることを事業につなげていくことで、これまでの人生とはまた違ったやりがいや喜びが生まれると思います。

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