【起業事例】行政書士、塾経営、宅建の3足のわらじで経営を安定化!Uターン起業を果たす

インタビュー

定年前に故郷沖縄へUターン起業を果たした玉城判さん。起業の準備やきっかけ、失敗談から準備をしていくにあたり重要なことについてお話しいただきました。

玉城 判 プロフィール
1959年 5月8日生まれ。糸満市出身。琉球大学法文学部法政学科在学中に行政書士資格を取得。卒業後、大同生命保険株式会社に入社。営業職として活躍し、支社長、管理職など20年以上の在籍期間を経て2011年に退社。2011年 生まれ故郷沖縄で「エネてぃーだ琉球株式会社」を設立し、代表取締役に就任。企業研修の講師として事業を開始し、その後玉城判行政書士事務所を開業、個別指導の学習塾「Axisとよみ校(FC)」を開校し、塾長に就任。現在に至る。詳細

入社当時から50歳を過ぎたら故郷沖縄に戻ることを決意

勤務していた生命保険株式会社を退職し、起業しようと思った経緯を教えください。

故郷沖縄で起業したのは2011年4月1日、51歳の時でした。大学を卒業してすぐに、大阪の生命保険会社に入社しました。実は入社当時から、50歳を過ぎたら沖縄に戻って、自分が培ったノウハウを地域に還元したいというライフデザインを描いていました。

大同生命での仕事はとても充実していましたので、早期退職にあたり、迷いがなかったわけではありません。会社員として出世したかったですし、実際にそのようなポジションに上がった時に、もう一つ上を目指したい気持ちもありました。

ただ、わが家は妻と二人家族で、これ以上妻を一人にしておくのもどうかと思い、50歳くらいが退職するタイミングだと判断していました

それ以前に退職後のキャリアを想定した準備はしてきましたし、ありがたいことに会社には社員のセカンドキャリアを後押しする制度が用意されていましたので、問題なく退職することができました。

自分のスキルを測るための「ものさし」として資格を取得

現在3つの事業を展開されていますが、起業して始めたことを教えてください。

まず着手したのは、自分が持つスキルを測るための「ものさし」作りでした。生命保険会社で20年以上勤務してきましたが、サラリーマンの場合、実際にどれだけのことができるか?という客観的な「ものさし」がありませんよね。

それに代わるものが「資格」だと考えました。そのため、私は沖縄に戻ってすぐに自分の「ものさし」を作るために、サービス接遇技能検定1級を皮切りに、ビジネス実務マナー技能検定2級などの資格を取得しました

資格取得後に、新聞広告で見つけた求職者支援訓練校での講師の仕事に応募しました。取得した資格とサラリーマン時代の経験が評価され、採用してもらえることになりました。そこでは、資格で得たノウハウと営業で培った経験を融合させた研修を、足掛け3年ほど行いました。

行政書士と宅建のダブルライセンスでワンストップサービスを実現

2012年に行政書士の業務を開始されたようですが、きっかけとなったのはどんなことでしょう?

実は行政書士の資格は、学生時代にすでに取っていたのです。就職した生命保険会社では、遺言や遺産分割などの話に発展することもあり、資格で得た知識が役立ちました。中でも、相続トラブルに直面することが多く、近い将来、沖縄でも同様の問題が起こり得ると予測できたため、いつか故郷に帰った際には、行政書士として相続問題に取り組もうと考えていたのが、そもそものきっかけです。

また在職中に、行政書士だけのワンライセンスよりもダブルライセンスの方がよいと思い、宅建(宅地建物取引士)の資格を取っていましたので、今は行政書士と宅建のダブルライセンスで仕事を請け負っています。相続のコンサルティングの中で遺言や遺産分割書を作成すると、ほとんどのケースで不動産が絡んできます。

それらのケアも、ダブルライセンスのおかげで、ワンストップでできるメリットがあります。

学生時代の経験とコーチングの資格が生かされた塾経営

学習塾を経営するまでの経緯を教えてください。

現在、私の塾に通っている子どもたちは、小2~高3まで50人ほどいます。大学生から社会人まで講師を12人迎えて指導してもらっています。私は巡回をしながら全体を統括し、子どもや先生にアドバイスもしています。

そもそも学習塾を始めようと思ったのは、企業向け研修がきっかけです。ある企業にお伺いした時、社会人なのに、自分の思いや考えが、まったく書けない方が少なからずいらっしゃいました。

「口で伝えられない」「人前でも発表ができない」。これはまずいなと思ったのです。その時、大人ではなく、もう少し若い世代の能力開発に携わることができないかと思いました。

時を同じくして、フランチャイズ展開している学習塾に出合いました。実は在職中に、退職後のキャリアを見据えてコーチングの資格も取っていたのですが、ちょうどその塾はコーチングを軸に据えた教育をしていたこともあり、「ここだ!」と即決しました。

他にも学生時代には、アルバイトで塾講師をしたこともありました。コーチングの資格やアルバイトの経験があったからこそ、塾の経営に抵抗なく入ることができたのだと思います。

安定的な収入を確保しながら、育てていく事業を持つ

3つの事業を同時に展開できる秘訣は何でしょうか?

2011年4月から起業して、7年たちました。現在展開している事業は、すべて今までの経験を生かしたものです。自分がやったことがない分野には参入していません。

行政書士と不動産の仕事を開始してからは、5年ほどになります。行政書士の業務は、依頼された案件が終わると同時に、お付き合いが終わるお客さんが多く、反復継続することがなかなか難しい。正直、経営は安定しません。

それに対して学習塾の経営は生徒さんの確保により反復継続して収益が得られるため、安定的な収益を得るための大きな助けとなっています。

昼は行政書士、夜は塾の経営と、四六時中仕事をしている状態ですが、安定的な収益が得られない苦しさを考えると、とてもよい環境です。

定年後などに起業する人は、本来自分が育てたい事業を本業とすべきですが、夢ばかり追っていても事業の継続は難しいでしょう。定期的な収入を得られる仕事を確保しながら、育てていく事業を持つことも一つの選択肢だと思います。

本業が軌道に乗ったら、それ以外の仕事を売却もしくは譲渡する方法もあります。

経験したことがない分野への参入は慎重に!

起業してから、失敗したことはありますか?

起業してすぐに、苦い経験をしました。あるきっかけで、それまで携わったことがない、飲食のコンサルティングをしたのですが、最終的には完全なる失敗に終わってしまいました。まったくやったことがない分野には、手を出すものではないですね。骨身に染みた出来事となりました。

ただし、失敗も「一つの経験」として捉えることが大事だと思います。なぜ失敗したかを冷静に分析し、今ではその失敗をお客さまのコンサルティングに生かすことができています。

慌てて会社を辞める必要はなく、しっかり準備することが大切

起業するにあたり、どのような知識をもって臨むとよいでしょう?

これから起業する人は、慌てて会社を辞める必要はないと思います。私自身は今思えば、もう一年遅くしてよかったかもしれません。もう一年会社に勤務しながら、独立後のシミュレーションをしてもよかったのかも、と反省しています

というのも、起業時に税制面での知識不足により、金銭で後悔したことがあったからです。当時の税制では、起業時の設立費用が控除される仕組みがあり、それを起業後に知り税務署に相談したのですが、すでに使えなくなっていたことが判明しました。もっと綿密に研究した上で独立すればよかったと、とても後悔しました。

当時は、会社の設立だけに意識が行ってしまい、重要なことがおろそかになってしまったのです。今では自分のようにならないために、これから行政書士として起業する人たちに、補助金や助成金についてアドバイスをしています。

重要なのは、「自分の強みを生かすこと」と「家族を大切にすること」

最後にこれから起業する人にメッセージをお願いします。

経営分析の中では、企業には強みと弱みがあり、強みを生かして事業を遂行することが重要だと言われています。そのことは自分に置き換えても同じことが言えます。

在職中からリタイア後の人生を想定し、常に自分の強みを模索して、その強みは「社外でも通用するか?」という視点を持ってください。ピンで戦っていかれるだけのその強みを作った上で、起業につなげてほしいです。

また起業すると、家族の存在ほどありがたいものはありません。サラリーマン時代は、会社の後ろ盾があり安定的な収入が得られるため、気持ちも大きくなってしまいがちです。しかし、独立するとそれがすべてなくなります。その時になって初めて自分の存在を知り、妻の助けのありがたみを感じます。

これから起業をするみなさんには、ぜひ、今日から家族を大切にしてほしいと思います。

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