事業計画の立て方と、明日から実践できる「シニア起業の心構え」【市勢善浩さんインタビュー①】
コラム
人生100年時代が到来し、定年後の人生の過ごし方について多くの方が考えるようになりました。充実した毎日にするために、これまでの経験や人との繋がりといった資産を活用して定年後に起業を考える人が増加しています。 シニア起業で成功した方々は、どのように準備を進めたのでしょうか。
今回は、フェイバニッツ合同会社代表の市勢善浩さんに、起業するまでの経緯や事業計画の立て方、シニア起業に必要な心構えについて取材させていただきました。
アパレル企業経験35年、マーチャンダイジング経験30年のノウハウとアイデアを生かし、お客様を裏切らないビジネスモデルを実現すべく起業を決意。ミドル世代に向けたメンズニットジャケットブランド「FavorKnits」を運営する。
https://store.favorknits.co.jp/about
2021年3月 『Faorknits(フェイバニッツ)』創業。
2020年11月 日暮里デザインファッションコンテスト2020 グランプリ受賞
2021年1月 TOKYO創業ステーション 事業計画書策定支援終了証授与
2021年11月 荒川区ビジネスプランコンテスト2021 東京商工会議所荒川支部長賞受賞
2023年2月 第三回東京シニアビジネスグランプリ 優秀賞、オーディエンス賞受賞
”好きな仕事”だから退職後も続けたい
定年後は「自分らしく働きたい」「得意なことを活かして仕事をしたい」「本当に自分がやりたいことで世の中に貢献したい」という願望をもって起業する方が多くいらっしゃいます。好きな仕事で定年後も輝いていたい、という思いは多くの方に当てはまるのではないでしょうか。
会社員時代に培ったノウハウや長年の経験を活かして、ご自身の好きなアパレル業界で起業した市勢さんも、そのうちのひとりです。
Q:市勢さんは、なぜ起業しようと思ったのですか?
外資系アパレル企業で退職勧告を受けたことが起業を考え始めたきっかけです。商品開発から販売戦略までを担うマーチャンダイザーとしてブランドの全責任を負う立場だったので、業績次第で立場が危うくなることは常に覚悟していました。それでも、定年間近というタイミングで退職を余儀なくされたことに、不安や戸惑いは隠せませんでした。
退職後、アパレル企業への再就職を考えて人材紹介会社に登録しましたが、コロナ禍で採用が激減していたということもあって就職活動は難航。定年間近という不利な状況で、就職先が見つかることはありませんでした。
「アパレル以外の職種は考えられない。どうせやるなら”好きな仕事”をしたい」
それならば、と起業に踏み切ることができたのは、学生時代にマーチャンダイザーに憧れてアパレル業界に入り、これまでの人生で自分のやりたかったことを仕事にできてきたからです。本当に好きな仕事だからこそ、退職した後も自分がやり残したことに取り組みたいと思うことができました。
Q:もともと、ご自身の定年後のイメージはどのようなものだったのでしょう?
「生涯現役」というものに漠然とした憧れはあり、定年後もアパレル業に携われるといいなとは思いつつも、目の前の仕事に全力だった会社員時代、起業を意識してなにか準備をしていたわけではありません。
退職後に本格的に起業の準備を始めたわけですが、仕事を辞めて収入がない間も生活費は必要ですし、学費もかかります。さらには起業のための資金も必要で出費が多く、お金の不安から焦燥感のようなものを感じることもありました。 それでも、誰かに相談したり息抜きをしたりしながら、あまり深く悩みすぎることなくここまで来れたとなと思います。
人生100年時代と言われている昨今は、シニア世代で活躍している方を多くお見かけしますよね。自分もまだまだ現役で頑張れるんじゃないか、と勇気づけられました。セカンドライフを前向きに捉える方々の存在や世の中の風潮が、私の起業への挑戦を後押ししてくれたんです。
今のあなたに必要な取り組みは?起業のための準備をしよう
起業すると決めたら、まずは何から始めればよいのでしょうか?第一歩を踏み出せない方は少なくありませんが、具体的な目標を定めると、起業の準備として取り組むべきことが見えてくるかもしれません。
◾️知識・ノウハウを学び直すことで新たな道が開ける
Q:起業するために、どのような準備をされてきましたか?
起業を決意したものの、取り扱おうと思ったニット製品に関する専門知識に乏しい。そこでまずは、ニットの専門学校に入学して必要なスキルを一から学ぶことを決意しました。 これまでの知識や経験だけで勝負しようとする必要はありません。
会社員時代に得られなかったノウハウを習得したいという気持ちがあれば学校に通って「学び直す」ことで、ビジネスの選択肢が広がると思います。
◾️起業のための専門知識は創業支援サービスを頼りに
Q:起業に必要な知識はどこで身につけましたか?
起業に関する知識は、TOKYO創業ステーション(東京都中小企業振興公社)を活用して習得しました。あらゆるお悩みに寄り添いサポートしてくれる「コンシェルジュ相談」は、起業を考え始めたばかりで右も左もわからない時に本当に頼りになりました。
事業計画を立てる段階では、ビジネスプラン作成の支援をしてくれる「プランコンサルティング」を活用し、ビジネスプランを練っていく際に必要な知識や考え方は「起業塾」というセミナーを受講して、起業するうえで必要なノウハウを体系的に学びました。
現在も、当時作った計画書をベースに収支計算や資金繰り表を更新しながら活用しています。
50歳を過ぎてからのチャレンジ。今だからこそ輝ける「定年後の起業」とは
起業に興味はあるけれど、資金面への不安や収入減に対するリスク、事業運営に関する知識・ノウハウがないことへの不安から起業に踏み切れないという方は多くいらっしゃいます。しかし、シニア世代の起業にはメリットもあるようです。
◾️定年後は、これまでの集大成を発揮するとき
Q:50歳を過ぎてからの起業ですが、シニアならではのメリットはありますか?
今の事業は、私が会社員時代に積み重ねてきたことの集大成です。アパレル企業経験35年、マーチャンダイジング経験30年の中で国内外のさまざまなブランドの服に携わってきた経験が今のビジネスを支えていますし、知識や経験が豊富な「今の自分」だからこそ、独立後の事業拡大を成し遂げることができたと思っています。
シニア世代の強みは、これまでの人生で積み重ねてきたものを事業に生かせることです。長年の知識や経験は必ずビジネスの強みにもなりますし、若いうちに経験値の少ない状態で起業するよりもリスクを最小限に抑えてビジネスを始められるのは、シニアならではのメリットではないでしょうか。
◾️「自分にしかできないこと」を追求し、理想を実現するチャンス
近年は、生きがいを求めたり、自分がやりたいことへの挑戦として起業する方が増えています。起業は、自分の思いを形にするチャンスでもあるのです。
Q:今だからこそ実現できる「自分にしかできないこと」はどんなことでしょうか。
「お客様に心から満足していただくためのビジネスモデルをつくりたい」という思いを形にするのは、独立した今だからこそ実現できたことです。これまでは会社の意向を最優先にしてきましたので、すべてが自分の思い通りだったわけではありません。
例えばアパレルだとセール販売で売り上げを出しますが、これは在庫を減らそうとする会社都合によるものです。私の個人的な考えとしては、セール前に正規の価格で購入されるお客さんが損をすることになる仕組みに疑問を持たずにはいられませんでした。
起業後は、商品の価格設定、セールの廃止などを決めてお客様を裏切らないビジネスモデルを追求することで、本当に自分がやりたいことや理想を実現しています。
Q:起業の楽しさはどのような時に感じますか?
昔から変わらないのが「服が売れること」が本当に楽しいということです。自分の手がけた服を気に入って何着も購入してくださる方がいたり、リピートしてくださる方がいるとそれがモチベーションになりますし、お客様からお褒めの言葉が励みになっています。
シニア起業で人生をもっと豊かに
今回のコラムでは、シニア起業の心構えとして知っておきたい「起業への取り組み方」と「シニア起業のメリット」について、市勢 善浩さんの経験をもとにご紹介しました。これまでの豊富な人生経験を武器に変えて「自分らしく働く」というのは、シニア起業の醍醐味のひとつではないでしょうか。
好きな仕事は、あなたの生きがいとしてこれからの人生をもっと豊かにしてくれるはずです。
◇TOKYO創業ステーション コンシェルジュ起業相談◇
このコラムのインタビュイー 市勢 善浩さんが活用された創業支援サービスです。東京都内での創業前〜創業間もない法人または個人の方を対象に「起業に関する相談」を毎日お受けしております。 起業経験のある28名のコンシェルジュがお悩みに応じてアドバイスいたします。
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