“好き”を仕事に変えたら、人生が動き出した。50代での起業で見つけた「本当にやりたいこと」への挑戦【直井美穂さんインタビュー②】
インタビュー

起業に興味はあるけれど、なかなか一歩を踏み出せない。それはあなただけではなく「失敗したらどうしよう」「自分にできるのかな」という不安は誰にでもあります。
ですが、その一歩を踏み出した先にしか見えない景色があるのも事実です。
直井さんもその一人。迷い、悩みながらも起業を通して「やってみたい」という気持ちを少しずつ形にしています。
起業で“自分らしい人生”を切り開くことができる
Q:「起業」を実現できたのはなぜだと思いますか?
今振り返ってみると、これまで行動を起こせなかったのは「自分のやりたいことが分からなかったから」だったのかもしれません。必要に迫られて思いきって最初の一歩を踏み出してみると、不思議なことに、次の一歩は驚くほどスムーズに出せたんです。
そもそもこの仕事は、夫の“好き”から始まったものなんです。私は歴史は好きだけど、お祭りのことには正直そこまで詳しくなくて、「これは私の好きなことではないかも」と最初は思っていました。
ですが事業を進めるうちに、私が好きなのは「アイデアを形にしていくこと」で、それが私の本当にやりたいことだと気づいたんです。最初は、“好きなこと”をそのまま仕事にしたわけではありませんでしたが、今ではこの仕事が「私の好きなこと」になりました。
「これがやりたい!」という明確な答えを見つけるのは意外と難しいけれど、動き始めてみれば見えてくることもあるのではないでしょうか。
Q:起業して変わったことはどんなことですか?
一番は、自分自身の存在意義が明確になった気がしています。起業するまでは「夫の妻」という肩書きの中で生きていたような感覚がありました。人に紹介されるときも、自分の話をするときも、つい夫の仕事や夫のことばかりを話してしまうのが当たり前だったんです。
起業して「私はこんなことをしています」と堂々と言えるようになってからは、仕事においても生き方においても「私自身」として人生を選び、歩んでいると思えるようになりました。「私には、私の仕事がある。」そう思えるだけで本当の自分になれた気がしますし、毎日がワクワクするんです。
そして、生活スタイルも大きく変わりました。以前は時間を持て余していたのですが、今はいい意味で毎日が忙しく充実しています。もともと、忙しいのは苦手なタイプだったのですが、誰かにやらされている忙しさと自分がやりたくて突き進んでいる忙しさってまったく別物なんですよね。気がつくと「忙しいのが嬉しい」と思えるようになっていました。
まずは、一歩踏み出してみよう!

Q:経営者として心がけていることはどんなことですか?
まだまだ駆け出しなので、自分が経営者だという自覚は正直あまりありません。
ですが、自営業という道を選んだ以上“先”を見つめることは大事だと思うので、どこに向かっていくのか、どうなっていたいのかビジョンというようなビジョンは、不安になったときほど意識するようにしています。
「こうなったら最高だよね」という未来の理想を描くことで、自分を少しでも前に進めることができるのではないでしょうか。
それでも不安になるときは、起業する前の自分を思い出すようにしています。「何かやりたい」「もっと自分にはできるはず」という漠然とした思いがあるのに、何をやっていいか分からなくて、ただ悶々と過ごしていたあの頃の私と比べれば「やってみたい」を行動に移せている今のほうが全然良い、と思うことができます。
Q:これから挑戦していきたいことはありますか?
デニム股引の方は、現在3回目のサンプル製作中で、デザインを改良しています。
まだまだ知識不足な部分も多いので、学びながら一歩ずつ前進していきたいと思っております。
祭り装束は日本の伝統的な商材なので、海外にチャレンジできること、もし海外にチャレンジできたら、自分が頑張ることが日本のためになるということが結構強みかなと思っています。
新商品としてデニム素材の股引きを手掛けているのですが、伝統的なアイテムを現代の感性で再構築し、粋で、そして日常にも馴染むような一着にしたいと思っています。この新商品を広めていくにあたって、まずはテスト販売も兼ねてクラウドファンディングに挑戦してみたいと考えています。
Q:直井さんの原動力となっているものは?
「こうなりたい」という未来像が原動力となっています。
たとえば、私たちが取り組んでいることが海外でも評価されて、丸直商店の商品がこれからもっと売れるようになったとしたら。 その収益を、日本の伝統文化やお祭りに還元したいと思っているんです。
自分たちが努力して形にしたことが誰かの役に立ち、それが地域の文化や人々の心を支える一助になれたとしたら、こんなに幸せなことはありません。その未来を思い描くことが、いまの私たちの活力になっています。
Q:起業にチャレンジすることの価値って何だと思いますか?
「自分の人生を、自分の手でデザインできること」だと思います。
常に仕事のことで頭がいっぱいですが、自分の裁量で動かせる仕事があるというのは何にも代えがたい喜び。毎日、起業してよかったなと思うことができていますし、 自分の人生を自分で動かして「なりたい自分になれる」という感覚に一歩ずつ近づいていると感じます。
そして、起業してみて「人の温かさ」を身近に感じられるようになりました。
たとえば、私が起業したことを知った町会の方々に何かと気にかけていただいて「応援してるよ」「何かあったら力になるからね」といった言葉をかけてもらえたこと。商品をご購入いただいたお客様からの、たくさんのメッセージ。
これまで接点がなかった人たちとの繋がりの中に、こんなにも温もりがあったんだと気づけたのは、起業という行動があったからこそです。たくさんの支えが励みとなって自分の道を切り拓けていることに毎日心から感謝しながら、楽しくお仕事をさせていただいております。
Q:これから起業したいと考えている方にアドバイスをお願いします
50歳を過ぎて、これからの人生を考えたとき、「余生」と呼ぶにはまだまだ長い道のりだと思いませんか?
だからこそ、ただ不安を抱えて過ごすのではなく、思いきってチャレンジしてみる。自分の力で稼ぐという選択肢に目を向けてもいい時期なのではないでしょうか。
実際に事業を始めてみると、助成金や無料相談など、思った以上に起業を支えてくれる制度が充実していて「国って本気で起業を応援してるんだ」と感じました。こうしたサポートを活用すれば、起業は決して特別な人だけのものではありません。
かつての私は、「どうすれば失敗しないか」「どうすればうまくいくか」と頭の中であれこれ考えるばかりで、なかなか動き出せませんでした。
でも、いざ始めてみたら、思っていた以上に次々とアイデアが浮かんできて「こうしてみたい」「これを形にしてみよう」と前向きな気持ちが自然に湧いてきました。
振り返ってみると、考え込んでいた時よりも、一歩踏み出した“その後”のほうが、ずっといいアイデアが生まれていた気がします。なので、もっと多くの50代以降の方に、ぜひ起業にチャレンジしてみてほしいと思っています。
自分のペースで夢を育てよう

伝統的なデザインゆえに「昔っぽい」というネガティブなイメージをもたれがちな従来の祭り装束のイメージを払拭。特別な日にも普段使いにも合わせられる、ファッションとしての洗練度が高いアイテムばかりだ
直井さんは、起業後も百貨店でのお仕事を続けながら、ご自身の事業を少しずつ育ててこられました。
安定した収入を確保しつつ、心のゆとりも保ちながら歩みを進めていく。そんな“二足のわらじ”のスタイルが、無理なく自然に事業を成長させることにつながっているのです。
このように、まずは副業として小さく始めてみることは、不安を和らげ、起業に挑戦する自分を支えながらやがて大きな一歩へとつながっていく、堅実で賢い選択肢のひとつです。焦らずじっくりと自分らしいペースで進んでいくことが、事業を成長させるうえで何より大切なのです。
どんなに小さなスタートでも、動き出せば、確実にあなた自身の未来を動かす力になります。大切なのは「やってみたい」という気持ちを信じて、一歩を踏み出すこと。勇気がいることですが、その一歩を踏み出した先には、想像もしなかった景色とあなた自身の新たな可能性が待っています。
これからの人生を、もっと自分らしく、もっと自由に歩みませんか?「起業」へのチャレンジが、その第一歩になるかもしれません。
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