【起業事例】起業の決意は60歳。38年の教員生活の後にカウンセラーとして活躍の場を広げる

インタビュー

教員生活を定年しカウンセラーとして活躍する岩石ひで子さん。定年はひとつの伏し目であり終わりではないと語ります。

岩石 ひで子 プロフィール
大阪教育大学卒業。
1971年 公立学校教員として2009年まで38年間勤務。
不登校・適応障害などに悩む児童・生徒のヘルスカウンセリング、子育てなどに悩む父母らのヘルスカウンセリングにあたる。
2005年 米国ニューポート国際大学西日本校の准教授・玉田毅氏に師事 。箱庭療法を日本へ導入したことで知られる、京都大学名誉教授で臨床心理学者の故・河合隼雄氏に師事。
2007年 大学の臨床心理学の受講、認定心理士の資格を取得。
2009年 公立学校教員を定年退職。
2009年 文部科学省が実施する「スクールヘルスリーダー派遣事業」に関わる後進の教育の指導を教育委員会より委嘱される。
同年、「カウンセリング 恵(めぐみ)」を開設。カウンセラー、セミナー講師として現在に至る。
2013年~2017年 兵庫県学校厚生会の専門相談員とセミナー講師を委嘱され、県下の公立校の現職/退職の教職員の相談・指導にあたる。

認定心理士の資格を取得し、シニア起業を果たす

中学校教諭からカウンセラーとして起業するまでの活動についてお聞かせください。

私は、大学を卒業してから60歳まで養護教員として兵庫県神戸市の中学校に勤めていました。
教員時代は、いじめの問題に取り組んだり、摂食障害やリストカット、不登校など、さまざまな不安や悩みを持つ子どもたちのケアに力を尽くしてきました。

神戸市では1995年に未曾有の大災害、阪神・淡路大震災が発生しました。震災によって受けた甚大な被害の復興を進めるなか、1997年には当時中学生だった少年による神戸児童連続殺傷事件が起きました。

一瞬にして街がガレキと化した大震災、自分たちと年齢が変わらない少年による犯罪により子どもたちの心は傷つき、教育現場は混乱と不安に陥っていました。

学校が荒れ、校舎のあちこちで生徒が泣いていたり、学級崩壊などの問題が起きていたため、これまで以上に子どもたちには救いの手が必要でした。数年にわたり、校医や児童精神科医、大学教授などの専門家とチームを組んで子どもたちの心のケアと実態調査を行いました。

1998年には、「全国心の緊急会議(現在:文部科学省)」に神戸市の代表として出席するほか、子どもたちの現状や今後の課題について文部科学省へ報告・発表などの役割も担いました。

深刻化していく子どもたちの心のストレスを軽減していくために、大学で臨床心理学を学び2007年に認定心理士の資格を取得。定年退職をした後は、カウンセラーとして子どもたちや保護者、教育に携わる教職員の心のケアにあたっています。

2013年から2017年まで、兵庫県下の教職員を対象にしたセミナーの講師や専門相談員を委嘱されました。

事業内容は箱庭セラピー・描画セラピーなどを中心に展開

「カウンセリング恵」ではどういったケアを実施されていますか?

主に箱庭セラピーと描画セラピーを用いたカウンセリングを行っています。

箱庭セラピーは砂が入った大きな箱の中に、ミニチュアの木や家、動物、人などを自由に配置したり、砂を使って川や海、丘などを作ったり、クライアントが自由な発想で表現を試みる方法です。

描画セラピーは、画用紙に絵を描いてもらう方法です。人と家、実のなる木は必ず描いてもらいますが、動物や草花などを加えたり、色を塗ったりするのは本人の意思に任せます。

こういった創作活動を通じて、クライアント自身が気づいていない心の中の状態や、声にならない思いを表現してもらうことが目的です。

ほかに、テーマにそって、雑誌の切り抜きなどを1枚の紙に張っていくコラージュセラピーなどもあります。

箱庭や描画、コラージュは、クライアントも私も楽しみながら取り組めるセラピーなので取り入れています。クライアントの心の奥底にある感情や考え方のくせを導き出すためにも、日々の緊張を解いてリラックスしてもらうことを心がけています。

定年退職後の事は考えない人生。定年退職となる60歳で起業を意識

定年退職のすぐあとに起業されていますが、起業を考えたのは何歳のときですか?

実は、起業を意識したのは定年退職となる60歳に年に入ってからなんです。

私の38年に及ぶ教員生活は、子どもたちがどうすれば心や体を癒やし、自信を持って一歩踏み出していけるのかを模索する毎日でした。目の前の仕事に懸命に取り組んでいたので、定年退職後の自分の身の振り方を考えることはほとんどありませんでした。

近年、文部科学省では「学校すこやかプラン」のひとつとして、公立の小学校や中学校にスクールヘルスリーダーを派遣しています。退職後は、このスクールヘルスリーダーの指導教官としての仕事も決まっていたので、起業という選択肢は頭の中にありませんでした。

きっかけは「起業しなさい!」という恩師の言葉

カウンセラーとして起業するきっかけは何でしょうか?

2009年の3月に退職し、4月からは指導教官を務めることが決まっていましたが、長い教員生活を終える日を目前に、ふと「これから、自分はどうしていくべきだろう?どうなっていくのだろう?」と考えました。

恩師である大学教授に「今月いっぱいで定年退職をするのですが、今後はどのように過ごしていくのが良いでしょう?」と相談をしたところ、「あなたは、起業しなさい!」ときっぱり言われました。「自分で起業の努力を積み重ね、新たな地平を切り拓いていきなさい」とのメッセージと受け取りました。

この言葉をいただいて、指導教官と並行してカウンセラーとして独立し「カウンセリング恵」を開設することを決心しました。

名刺・資格証などは「私が何者であるか」を示す大切なもの

起業する際に苦労したことはありますか?

トラブルもなく、特に苦労はありませんでした。カウンセリングをするオフィス探しもとてもスムーズで、とんとん拍子で決まりました。

私は神戸市中央区にオフィスを構えているのですがとても気に入っています。近くには智・仁・勇の3つの徳を備えた聖人・楠木正成公を祀る「湊川神社」があって、市街地ではありますが、とてものどかで穏やかな環境です。

目に留まった不動産屋に入り、事業内容を説明して最初に紹介されたのが今のオフィスです。大家さんはとても親切な方で「カウンセリング恵」の看板や名刺のほか、カウンセリングで使う備品の用意などを手伝ってくださいました。

カウンセリングルームには、「私のプロフィール」を額に入れて壁に飾っているのですが、これは学校関連の企業の制作によるものです。

名刺や資格証は「私が何者であるか」を示す大切なものなのですが、早速、周りの方たちの協力を得て用意することができました。

また、起業して間もない頃に教員時代の教え子に街でばったり会いました。私がカウンセラーとして独立したことを話すと、「先生、ホームページを作りましょうか?」と言って「カウンセリング恵」のサイトを開設してくれました。

恩師の言葉、大家さんのサポート、教え子たちのさまざまな縁に支えられて「カウセリング恵」は誕生しました。

ひたすら目の前の選択肢を選んできた。それが今の人生に

教員時代にさまざまな実績を積んでいらっしゃいますが大変でしたか?

これまでの人生を振り返ってみると、目の前の選択肢を選んできただけのように思います。
子どもたちの心に寄り添うなかで、自分なりに努力をしてベストを尽くしてきました。川の流れのごとく自然の流れで現在にたどり着いているイメージです。

教員をしていた頃は、教育現場の代表として国や県で発表したり、PTAなどで講演したり、いろんな仕事に携わってきましたが「この仕事は私にできるのかなと思いつつも、これはきっと自分に与えられた課題なのかも。それならば楽しく挑戦してみよう」と役割を果たしてきた印象です。

目の前の扉が開いて「これをやりなさい」と何かに導かれてきた、と言った方がわかりやすいでしょうか。

もともと頼まれると「イヤ」と言えない性格なので、人がやらないことをついつい引き受けてしまう性格も影響しているかもしれません(笑)。

でも、おかげでいろんな体験をさせていただきました。恩師・先輩教師や大学の教授、医師などから勇気づけられました。学問を究め続ける方々とお仕事をご一緒できたことは、とても幸運だったと思います。

定年はひとつの節目。シニア起業は自分らしさを大切にして独自の道を歩める自由さが利点

同じシニア世代の人たちにメッセージはありますか?

「カウンセリング恵」では、2016年、2017年に神戸大学のインターンシップを受け入れました。教員を退いても、若い人たちと交流を図れるのは、私が今までもらった恩を少しでも返せる機会として大変ありがたく感じています。

教師という教える立場であったとしても、生徒から教えられることが多く、子どもたちが感じるままに発する率直な言葉によって私自身は勇気づけられ、成長させてもらいました。そして、それは今も同じです。

昨今はシニア世代が元気で「人生100年時代」と言われています。60歳で定年退職したとしても、その後の人生が40年もあります。定年は一つの節目で、今後を考える良いきっかけであり、第二の人生の幕開けであり人生の終幕ではありません。

私は「人は一生をかけて自分らしくなる。自己実現を目指していく」と考えていて、この私自身も道半ばです。

私は「人生に無駄はない」と考えています。自分の限界を安易に決めてないでほしい、無理かと思っても、チャレンジすれば必ず何かが身に付きます。それが成長、あるいは、成熟することだと思います。

私たちの誰もが、自分をわかっているようでわかっていません。「私は私を知らない」のです。「何十年も生きてきたし、自分のことは自分が一番よくわかっている」と思ってしまうと、外に向けて開かれていた扉が閉ざされてしまいます。

吉川英治のことば「われ以外皆師」のごとく、自分のまわりにいる人たちから学ぶ姿勢を忘れないようにしたいものですね。「気負わず誠実に!」を仕事のモットーにすれば、いくつになっても道が開けていくと思います。

組織などに属していた若い頃と違うのは、苦労を重ね経験を積んできた分、自分らしさを大切にして独自の道を歩める自由さが備わった点でしょうか。

年齢は重荷でしょうか、それとも引き出しでしょうか。決して重荷ではないはずです。明日はどんな明日がやってくるのか、どんな出会いがあるのか。年齢を重ねても「いまここで!」を大切にして、未来の種まきをしていきたいものですね。

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