50代からの起業がチャンス!「自分らしく輝くための一歩」を踏み出してみませんか【直井美穂さんインタビュー①】
インタビュー

50代は、まさに人生の折り返し地点。これまで全力で取り組んできた仕事や家庭での役割が一段落し、次のステージに向けた“転機”が訪れる時期です。
たとえば、子育てがひと段落して自分の時間が持てるようになったことや、役職定年、早期退職をきっかけに、これからの働き方を見直す人が増えてきます。
そして「今のままでいいのか?」「やりたいことに挑戦するなら今じゃないか?」そんな気持ちが芽生え始めるのもこの時期です。
転職や起業、地域活動など、これまでのキャリアを活かしながら新たな挑戦に踏み出す人も少なくありません。 同時に、多くの人が価値観の変化を感じ始めます。
肩書きや収入だけでなく「本当にやりたいことを追求したい」「もっと自分らしく、心豊かに生きたい」といった内面の声に気づくようになるのです。 とはいえ、「やりたいことが見つからない」「起業なんて不安」と迷いを感じる方も多いはず。
ですが、不安や迷いを抱えるこの時期こそ、自分の可能性と向き合うチャンスでもあるのです。
好きなことや、得意な分野で起業できたら、毎日をもっと自分らしく、生き生きと過ごせる気がしませんか?
今回は、これまでのキャリアとは異なる世界に飛び込んで50代からのキャリア形成に成功した合同会社丸直商店代表の直井美穂さんに、起業のきっかけやこれまでの取り組みについて取材させていただきました。

江戸の粋を今に伝えながら、日本のお祭り文化を次世代に繋ぐ
合同会社 丸直商店 直井美穂 さん
2024年6月、お神輿をこよなく愛する夫とともに祭り装束と用品の専門店「丸直商店」を創業。接客業で磨いた“お客様目線”を強みに、ECサイトの運営から商品開発まで自ら手がける。
江戸の粋を継承しつつ現代の感性で装束をリデザインし、懐かしさと新しさが共存する“粋で新しい”唯一無二のスタイルを提案しながら、日本のお祭り文化を次世代に繋げることをミッションに、伝統を今に、そして未来へと届けている。
第5回東京シニアビジネスグランプリでは、グランプリ&オーディエンス賞をダブル受賞。
“粋”を現代に伝える──お祭り文化×ファッションの挑戦

50代という人生の節目に、夫の“お祭り愛”をきっかけに新たなビジネスを立ち上げた直井美穂さん。
未経験の分野での、ゼロからのチャレンジでしたが、江戸時代から受け継がれてきた日本のお祭り文化を次世代につなぎたいという熱い想いで起業し、長年の接客業で培った“お客様目線”を武器に少しずつ事業としての形を築いています。
そして、祭り装束の歴史的背景や粋な着こなし方を伝え、ファッションの面から新たな風を吹き込もうと奮闘しています。
Q:直井さんの事業について教えてください。
私たち合同会社丸直商店は、祭り装束と用品に特化した専門店です。江戸時代から続く日本の祭り文化を次世代へと繋ぐため、伝統を大切にしながら、現代の感性を取り入れたオリジナル商品を展開しています。
特にこだわっているのは”粋”な着こなしです。お神輿の担ぎ手の皆さんに喜んでいただけるような「格好良さ」にこだわったオリジナルの商品を販売し、どのように着るのが粋か伝えていくことで、江戸時代から続く祭りの発展のために伝統を受け継ぎたいと考えています。
Q:起業のきっかけを教えてください。
もともと百貨店で接客業に携わっており、定年を迎えていらっしゃるお客様を接客する機会が多かったのですが「この先どうしよう」と悩まれている方がすごく多くて…。
自分もこのまま定年を迎えて、いつか仕事がなくなってしまうのではないか。そのような不安を常に感じていました。 私には、これまで培ってきたと言える大きなキャリアがないんです。
だからこそ、今からでも「自分の力で何かを築きたい」「最後に自分の可能性を試してみたい」という漠然とした思いはありましたし、定年後の不安をなくすためにも、起業して自分の仕事を持ちたいと思うことはありました。
ですが、あれこれ考えすぎて腰が上がらないタイプで「やっぱり上手くいかなそうだな」と先に結論を出してしまって、ずっと行動を起こせずにいました。 そんな私が起業のための最初の一歩を踏み出せたのは「必要に迫られたから」というのが大きな理由です。
当時、夫は50歳。会社員として毎日多忙を極めており、日に日に憔悴していく姿を見て「このままで本当にいいのか?」と強く感じていました。 自分達らしくあるためにも「好きなことで起業にチャレンジしたい」という思いと、年齢的にも最後のチャンスかもしれないという現実に背中を押され、起業を決意しました。
Q:祭り装束を販売しようと思ったのはなぜですか?
私の夫は筋金入りのお神輿好き。これまでに何度も、担ぎ手として祭りの熱気を肌で味わってきました。そして、ただお神輿を担ぐだけでは満足せず、担ぐ”スタイル”にとてもこだわっているんです。
神輿を担ぐ独特のスタイルは江戸の町火消や筏師の職人の服装が元になっており、半纏、腹掛、股引に草鞋といった江戸時代の服装が現在に引き継がれたのは貴重なこと。
しかし、その伝統的で”粋”な着こなしを知らぬまま着崩れた装いをしている人が多く、そんな担ぎ手の姿を見るたびに「もっと格好良く、誇りを持って着こなしてほしい」という思いがありました。
お祭りは、たいてい年に一度の特別なイベントです。そのぶん衣装を着る機会も限られているせいか、本当にこだわって選ばれた祭り衣装は意外と少ないように私も感じていました。
もちろん、呉服屋さんで法被を選んだり、仕立て屋に頼んで一着を誂える方もいます。ですが多くの人は、既製の量産品を手に取っているのが現実です。
だからこそ、 誰でも手に取りやすくて格好良い“粋な祭り装束”を作りたい、という夢がありました。 良い衣装を着れば、担ぎ手も自然と格好良くなる。 カッコイイ担ぎ手が増えれば「自分も神輿を担いでみたい」と思う人がもっと増えるんじゃないか、そんな思いをずっと抱いていました。
そして、“粋な祭り装束”がどこにもないのなら「自分達で作りたい」というのが私たちの挑戦の原点です。
Q:直井さんご自身も、もともとお祭りがお好きだったのですか?
起業前は、私自身は夫ほどお祭り好きというわけではなく、お神輿を担いだ経験もほとんどありませんでした。 祭り装束も馴染みのないもので、股引きや腹掛けなどを初めて見たときは「 こんな昔の服が、まだ存在していたの?」と思わずにはいられませんでした。
お神輿好きの夫とは対照に、歴史好きの私にとって興味が湧いたのは「どうしてこのような衣装が生まれたのだろう」「誰がどのように身につけていたのだろう」ということ。
調べていくうちに、祭り装束は、もともと江戸の職人たちの日常着や仕事着だったということを知りました。 その名残が現代まで受け継がれていることに感動し、面白いと思いました。
そして、今なお存在する歴史ある祭り装束が、もっと人々の身近なものになれば、江戸時代から続く祭りの発展にも繋がるのではないかと思ったんです。
50代、自分らしい人生への決意に「起業」という選択を

自宅近くの問屋街で祭り用品を仕入れ、ECサイトで販売することから開始したという直井さん。いくつかの問屋さんのご協力を得て、今では市場で売っているほとんどのお祭り用品を仕入れられるようになったとか。
まったく新しい分野での挑戦を始めた直井さんにとって、ECサイトの運営はもちろん、仕入れも販売も初の試み。未経験の分野で、一体どのようなことから取り組んでいったのでしょうか。
Q:起業のために、どのような準備を行いましたか?
起業を決意して、そこからわずか1ヶ月で会社を登記し、さらにその1ヶ月後にはECサイトをオープンさせました。ECサイトは維持費も大きくかからないので、とにかくオープンしてしまおうという感じでしたね。
準備期間なんてほぼゼロに等しいと言ってもいいくらいで、万全の準備で挑むのではなく、実践しながら学んでいくスタイルでした。
ECサイトに関しては、オープンしたらすぐに反応があるのかなという期待も正直ありましたが、現実はそう甘くありませんでした。
私たちにはマーケティングの知識がまったくなくて、特にSEO対策などは本当に手探り状態だったんです。 サイト制作に費用をかけた分、月々のランニングコストを抑えるためにできることは全部自分たちでやろうと決めていたので、検索数を上げるには何をすればいいのか?どこが正解なのか?それすら分からず、とにかく試行錯誤の毎日でした。
今は、サイトを作ってくれた会社にサポートもお願いするようになり、おかげで少しずつ軌道に乗ってきています。
Q:そのほかに取り組まれたことはありますか?
起業してからというもの、東京創業ステーションで何度も「起業相談」を受けてきました。
オンラインセミナーなどを積極的に活用しながら、起業に関する知識と視野を広げたり、プランコンサルティングでサポートしてもらいながら事業計画書を作成しました。
最初は、助成金の申請に必要だからという理由で作り始めたのですが、事業計画を練るうちに、自分の中にあったぼんやりとしたビジネスのイメージがだんだんと形になって整理されていきました。
最初は思いつきもしなかったアイデアが浮かぶようになり、考えるほどにブラッシュアップもされていきます。なので「事業計画書」を作り込むことが、本当に重要だと思います。
Q:百貨店でのお勤めと並行しての起業だったとのことですが、両立するなかで大変だったことはありましたか?
職場の居心地が良く、接客業という仕事にもやりがいを感じているので、起業した今も変わらずパートの仕事を続けています。むしろ、起業初期の不安やプレッシャーに押しつぶされそうな時期には、その日常が心の拠り所になっていました。
自分の事業とパートという、まったく異なる二つの世界を行き来することで、自然と心と頭のバランスが取れている気がします。 2025年1月、東京シニアビジネスグランプリで最優秀賞とオーディエンス賞を受賞した翌日も、私はいつも通りデパートの店頭に立っていました。
舞台で事業を語った昨日の自分と、目の前でお客様に接している今の自分のギャップの大きさに「昨日のこと、夢だったのかしら?」なんて思わず笑ってしまったほどです。 「二足のわらじ」だからこそ、地に足のついた挑戦ができる。そんな等身大のスタイルが私らしさだと感じています。
「好き」が起点だからこそ、共感を呼ぶ商品を生み出せる

瓢箪型で細長く、中央がくぼんだ独特の形が、江戸前スタイルの粋とされているわらじ。丸直商店で取り扱いのあるビニール製わらじは、天然のわらじと比べて丈夫で長持ちするのがメリット。雨の日でも安心して履くことができる
Q:今力を入れていることはどんなことですか?
ECサイトに掲載するブログや商品の写真撮影、動画の多くは自分たちで制作を行い、私たちの”粋”なアイテムの良さがお客様に届くようにと試行錯誤を繰り返しています。
また、商品の写真をインスタに掲載したり「気になるものがあればDMをください」という呼びかけを行うなど、SNSでの宣伝を積極的に行っています。
地道に続けていると「これが欲しいです」「こんなアイテムを作ってください!」というような声をいただけることがあるんです。そのようなお客様の声をヒントにしながら、新しい商品づくりにも力を入れています。 最近では「こういうアイテムを待ってました!」「ずっと探してた商品でした!」という嬉しいお言葉を、DMなどを通していただけることが増えてきました。 うちで扱うのは「お神輿好きによる、お神輿好き好きのための商品」です。
だからこそ伝わるものがあって、共感してくださる方が多いのだと思います。 お客様と一緒に商品をつくっていくような感覚が何よりも楽しく、届けたいものがちゃんと届く喜びを少しずつ実感できるようになってきました。

伝統的な色柄を取り入れることで江戸前の伝統を感じつつ、日常生活でもスタイリッシュに身につけられるデザインと機能性の高さがポイント。どれも“粋”な着こなしにこだわって仕上げた丸直商店オリジナル商品
Q:丸直商店オリジナル商品について教えてください
当店のオリジナル商品は、お客様の「こんなのが欲しかった!」という声に耳を傾けながら、一つひとつ丁寧にデザインしています。「このデザインなら粋に着こなせる」という、私たち自身の感覚から生まれたアイテムばかりですが、実際に多くのお客様の“求めていたもの”だったようで、とても嬉しく思っています。
Q:お客様の心に響くものづくり、そのカギはどこにあると思いますか?
日本の文化を後世に繋いでいくには、 今の時代の人たちにも「いいな」と思ってもらえる形にアップデートしていくことが必要不可欠なのではないかなと感じています。
日本人としての誇りや、美意識のようなものは大切にしたい。それと同時に、時代遅れだと思われるような存在にはなりたくないんです。 伝統と革新、その両方を大切にするという点において、私たちの強い想いがあり、それが共感を呼んでいるのではないかなと思います。
未経験でも「起業」の道はひらける!

Q:初めての分野への挑戦に、戸惑いはありましたか?
夫の「好き」がきっかけで始まったこのビジネス。私にとってはまったくの未経験の分野で、起業に必要な知識もノウハウもゼロ。まさに手探りからのスタートでした。正直、始める前は不安もたくさんありました。
でも、実際に動き出してみると、不思議と道は少しずつ見えてくるものなんですね。 今は、調べれば情報がすぐに手に入る便利な時代。自分たちで調べて、試して、少しずつ形にしてきました。
起業も経営も初めてのことばかりですが、幸いにも、大きな壁にぶつかることなく事業を続けられています。 そして、これまでの人生で培ってきた経験や視点は、思いがけないかたちで今のビジネスに活かされるんです。 たとえば、長年続けてきた接客の仕事。お客様が何を求めているのか、どんなことに喜んでくださるのかを常に意識し、寄り添いながら働いてきたことで自然と身についていた「お客様目線」が、お客様志向の商品づくりにつながっているのだと思います。
接客の現場では、お客様が笑顔になる瞬間が嬉しくて、それが私のやりがいでした。その感覚が今のビジネスにもそのまま活かされているんだな、とあらためて実感しています。
50代、これからが起業のチャンス!新しい生き方の選択肢として「起業」を始めませんか?
不安や違和感を覚えるその瞬間こそ、「これからどう生きたいか」を見つめ直すチャンス。そしてそれは、きっと何か新しいことを始めるきっかけにもなるはずです。
「こんな働き方があったんだ」「こんな自分になれるんだ」 起業は、そんな気づきを与えてくれる選択肢のひとつです。たとえ未経験の分野での挑戦であったとしても、ここまで歩んできた人生のすべてが起業というステージで確かな武器になります。あなたが今まで積み重ねてきた経験や人とのつながりは、かけがえのない財産。
そのひとつひとつが、あなたのビジネスに深みと説得力を与えてくれるのです。 50代はまだまだ可能性にあふれたスタート地点。「今からでも遅くない」と信じて一歩踏み出した先には、きっとこれまでとは違う景色が待っているはずです。
本当に自分がやりたいこと、実現したい夢を考えてみませんか?自分らしい働き方、生き方を見つけるヒントを、ぜひこの記事から受け取ってください。
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