【起業事例】定年後の61歳で社会保険労務士として起業。仕事は生きがいになる。

インタビュー

現在「社会保険労務士」として活躍されている上島弘幸さんは、定年のない仕事である自営業者への道を見つけ資格を取得し61歳で起業。現場で生き生きと働いています。

上島 弘幸 プロフィール

1973年 同志社大経済学部を卒業後、大手製薬会社に入社。医薬情報担当などを務めた後、医療関係の公益法人に入り、東大、京大病院などとの臨床試験に関わる。その後、地元市役所で2年間、障害年金担当の社会保険労務士として勤務。2015年4月 自身の障害年金相談室を開設。地元市役所の窓口と自身の相談室で800件以上の障害年金に関する相談に対応。

45歳のときから準備、59歳で目標を立て61歳で起業

起業を考えた年齢や実際に起業した年を教えてください。

起業を意識したのは45歳のときです。退職後は起業して自分で仕事をできたらいいなという淡い希望を持っていました。きっかけは、製薬会社に勤務していた頃に出会った医師の姿です。

私は大学卒業後、製薬会社に入社しました。その会社では、主に医薬情報担当者として病院をまわって自社の薬の特徴などを説明し、処方をすすめてもらうという業務に携わっていました。

開業している医師には定年がないこともあり、60~70代であっても活躍されている方がいらっしゃいます。いつまでも現場で働き、生き生きと輝く医師に接することで、私も60代以降は自営業者として仕事を続けたいと思うようになりました。

そこで、在職中に何か資格を取得しておきたいと考え、45歳で中小企業診断士の資格を、53歳で社会保険労務士の資格を取得しました。

そして、59歳になったときに「社会保険労務士として開業する」という明確な目標を掲げ、61歳で起業しました

医療関連の知識と実生活での経験をもとに社会保険労務士を目指す

具体的な事業内容をどのように決めましたか?

社会保険労務士の業務は多岐にわたるのですが、私の場合60代になってからの起業ですから、対応範囲を広げるのではなく、ターゲットを絞ったほうがいいのではないかと考えました。

私は、医薬品会社で働いた後、病院を併設した臨床研究の公益法人に勤めていたので医療関連の知識があります。これを強みにしたいと思ったので、医療機関とのやり取りが発生する障害年金に事業内容を特化することにしました。

また、自分の家族に障がい者がいて、本人や家族の不安や苦しみを知っているので「障がい者目線で仕事をする社会保険労務士になりたい」という思いもありました。そんな背景から、起業後第一号の仕事として自分の家族の代理申請を行いました。

資格取得後は実務経験を積むために地元の市役所へ

起業すると決めてから、実践されたことは何ですか?

53歳で社会保険労務士の資格を取得したのですが、その時点では実務経験が全くありませんでした。人事部に所属していたわけではありませんし、年金事務所に就職していたわけでもない。資格を取得しても、実務経験がない状態ではスムーズに開業できないので、どこかで経験を積む必要があると思いました。

臨床研究の公益法人を退職した後、地元の市役所が障害年金専任の社会保険労務士を募集しているという情報を見たので応募。無事採用され、国民年金課で働くことになりました。役所では障害年金の相談会が開催されていて、お給料をいただきながら実務経験を積むことができました。

また、その職場は日本年金機構の審査担当部署と関わりがあったので、年金についてさまざまな情報やノウハウを学ぶことができたのは大きなメリットでした。

ある程度の期間は本業が収入に結びつかないことを覚悟

起業後、不安を感じることはありませんでしたか?

安定した職場で60代を迎えるまで働くことができたので、ある程度の蓄えもあり経済的な不安はそれほど感じませんでした。起業してすぐに、お客さまがつくわけではないということも理解していましたし。

実際に委任を受けてから、報酬をいただくまで約半年はかかります。その期間の生活費を補うための収入は得たいと考えていたので、ちょっとしたアルバイトをしました。はじめのうちは「アルバイトは1年程度かな」といった感じでしたが、結果的に約2年続けました。事業を立ち上げてからしばらくは、アルバイトと老齢厚生年金の収入のほか、それまでの蓄えを使いながら生活の安定を図りました。

起業して1年で、事業を軌道に乗せることは難しかったですね。2年目に入って、徐々に収益が安定し、3年目でようやく基盤を固めることができました。アルバイトの収入のほかに老齢厚生年金の収入もあったので、仮に事業で収益が上がらなくても、何とか食いつないでいける状態でした。

集客については、まずはホームページを作成して事業内容や私のプロフィールなどを紹介し、GoogleやYahooで広告を打ちました。また、公共施設で個別相談会を開催して集客を図ったこともあり、対個人営業のようなマーケティングになりました。現在は、ホームページを通じて月25~30件ほどの問い合わせがあります

おかげさまで、今は本業一本に絞り忙しく過ごしていますが、私の初めてお客さまのことは忘れられません。

認定の難易度が高いと言われている病気を抱える方で、申請して認定が降りるまで半年近くかかりました。年金機構から送付された支給決定の通知を受け取ったお客さまの「本当にありがとうございました。要望通りの等級2級を獲得できたのは先生のおかげです」という喜びの声を聞いたときは、この仕事を選んで良かったなとしみじみ思いました。

定年後起業のメリットは自分のペースで働けること

独立・起業のメリットについて教えてください。

依頼数が月によって変わるなど、自営業は毎月の収入が決まっているわけではなく、浮き沈みがあります。しかし、自分のペースで仕事ができるということが一番のメリットだと思います。

サラリーマンは、顧客獲得数や売り上げなど達成すべき目標を会社が決めますが、自営業の場合は自分でスケジュールを組み、目標を設定することができます。責任はすべて自分にありますが、自由に働けるというのは楽しいですね

ただ、「自営業=不自由業」でございまして、いつ依頼者から電話がかかってくるかはわかりません。そのため、現在は平日のほか土日、祝日も対応していて週7日働いています。
日々の労働時間は一定ではありませんが、平均すると1日6時間の勤務を7日間続けると週42時間働いていることになります。

サラリーマンの1日8時間、週5日勤務の労働時間とそう変わらないと言われるとそれまでなのですが、個人的にはメリハリをつけて、サラリーマン時代のように「土日は休みたい」という気持ちはあります。

しかし、お客さまは障がいがあり遠出ができない方が多いのです。また、ご家族のご都合で週末の土日でないと面談できない、といったことも少なくありません。お客さまと面談するための移動時間や書類作成、提出などの期限を考慮すると、断続的に働かざるを得ないのが不自由業たる所以(ゆえん)ですね。

サラリーマンの頃も自分で選んだ仕事ですが、会社の枠組みの中で割り振られたタスクを期限内にやり遂げることが大きな役割でした。今は自分自身で事業のかじ取りをするので、時間の使い方や働き方は自分次第です。

起業をする人は、この自由と不自由のバランスを楽しむことが大切だと思います。

仕事を持つことが定年後の生きがい、張り合いのある毎日を過ごせる

起業を目指す方へメッセージをお願いします。

起業するときは成功している個人事業主の取り組みを調べて、模倣するのも一つの方法だと思います。

私自身、ほかの社労士事務所のホームページの活動などを調べて、参考にさせていただくことも多いです。また、障害年金に特化した社労士の集まりや、社労士会の勉強会などが開催されていたら積極的に参加して情報交換しています。

例えば社労士として開業をする場合でも、資格を持っているだけで仕事が舞い込んでくるわけではありませんので、どのように実務経験を積むかということがポイントになってきます。私の場合、市役所で2年間実務に就いたことが起業の後押しになったのは間違いありません。

また、知らない分野ではなく、自分の経験を生かして開業するのが望ましいと思うので、過去の経験や実績などを十分に考慮した上で事業内容を決めると失敗が少ないのではないでしょうか。あわせて、経済的な基盤についても開業前に考えておく必要があります。

起業から10年の時点で残っているのは1割に満たないと言われており、現実は非常に厳しいと言わざるを得ません。そのため、40代や50代前半で家族を抱えての起業となると、それ相応の覚悟も必要になってきます。

しかし、60代は会社をリタイアしたり子どもが独立したり、それまでのライフスタイルに変化が訪れます。仕事を持つことが定年後の生きがいになるので、起業は良い選択肢だと思います。退職後、突然自分のやることがなくなり、張り合いのない毎日を過ごす方も少なくありません。

しかし、起業して仕事を続けることができれば、毎日会う人がいて、行かなければならない場所もある。それによって、活力ある生活を維持することができるのではないでしょうか。

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