会社員×副業から築いた”共感ベース”のビジネスの立ち上げ方【井上ひろみさんインタビュー①】
インタビュー
人生100年時代。
「このまま終わりたくない」
「次のステージに踏み出したい」
そんな思いで、自分の未来を主体的に描く人がますます増えています。
暮らしの快適化を軸に活動する を軸に活動する、la kurashi 代表・井上ひろみさんも、その一歩を大きく踏み出した一人です。
会社員として働きながら家事と育児に奔走し、奔走する中、小さい頃からずっと苦手だった片付けにも悩む日々を送った過去から「同じように悩む誰かの生きづらさを少しでも軽くしたい」という思いが生まれ、起業に踏み切ったのだといいます。
今回の取材では、井上さんがご自身の経験を“価値”へと磨き上げ、起業という新たなステージにつなげながら、50代からの人生を力強く動かしていった軌跡についてお話を伺いました。

la kurashi 代表 井上 ひろみさん
家電メーカーのパナソニックで33年間、調理家電の企画・開発に携わり、暮らしに寄り添う製品づくりに従事。自身が片付けに悩んだ経験をきっかけに、「誰かの生きづらさを少しでも軽くしたい」という思いから起業。現在は、片付け・時短家事の伴走サポートを中心に、企業向けワークライフバランス研修、男女共同参画に関する講演など、多方面で活動。顧客の気持ちと「かなえたい暮らし」に寄り添う丁寧なサポートが多くの支持を集めている。 https://mbp-japan.com/nara/lakurashi/
“家電一筋”からのキャリアチェンジ!片付けと時短家事で「心と暮らし」を整えるプロへ
会社員時代は、大手メーカーの電子レンジのマーケティング・商品企画に携わり、ゼロから生み出した商品を誰もが知るブランドへと成長させたりと、日本でも有数の知識量を誇る“電子レンジのプロ”としてのキャリアを築いてきた井上さん。
しかし40代後半、人生100年時代を見据えた先に「次のステップも生み出したい」と思い立ち、学び直しから起業へ。
現在は「暮らしの快適化」をテーマに、片付け・時短家事のアドバイス、企業向けのワークライフバランス研修など、多方面で活躍しています。
◾️第二のキャリアを切り拓く!定年を見据えた”次のステップ”への挑戦
井上さんのメイン事業である片付けサポート。片付けや時短家事のアドバイスにより、物で溢れていたお部屋がすっきりと整いました。「モノとの向き合い方が変わった」「家事のストレスがなくなり、心に余裕ができた」「家族が喜んでいる」といった声をいただけることが嬉しいという
Q:井上さんの事業について教えてください。
私は、時短家事コーディネーターと整理収納アドバイザーとして活動しています。 現在の仕事は大きく分けると「個人向けのサービス」と「企業向けのサービス」の2つです。
まず個人のお客様には、片付けや時短家事を通して、暮らしをより快適に整えるためのアドバイスを行っています。
「こうすればいいですよ」と、ただ正論を伝えて終わるのではなく、お客様の気持ちに深く寄り添いながら、心の負担を軽くし、マインドを整えるところからサポートするのが、私ならではのスタイルです。
片付けに前向きな気持ちを取り戻し、実際に行動し、成果が出るところまでお客様が一歩ずつ進んでいけるよう、最後まで丁寧に伴走しています。
企業様向けには、私自身が長く企業で働いてきた経験をもとに、ワークライフバランスや働き方をテーマにしたセミナーを行っています。
Q:これまでのご経歴や、独立・起業を考えはじめたきっかけについて教えてください。
大学時代は栄養学を専攻していたのですが、学ぶほどに「栄養学そのものより、料理をすることの方が好きかもしれない」と気づき、趣味のパン作りやお菓子づくりと関わりのある“焼く世界”に関わりたいという思いから、家電メーカーを志望しました。
そして、新卒でパナソニックに入社してからというもの、電子レンジのマーケティング・商品企画一筋。気づけば 「電子レンジのことなら誰より詳しい」と言えるほど深く関わっていました。
これまでの会社員生活はもちろん大変なことも多くはありましたが、日々大きなやりがいを感じながら、充実した毎日を送っていました。
それでも、子育てもほぼ終わり、仕事と育児で手いっぱいだった毎日から少し余裕が生まれた頃、ふと心に小さな変化が生まれたのです。
「このまま会社員を全うするのも素敵だけど、もうひとつくらい違う世界も見てみたい」
そんな気持ちがふわっと湧き上がってきたのが、40代後半の頃でした。
◾️苦手を克服した体験が“ビジネスの原点”に
Q:起業を意識し始めてから、どのようなことに取り組まれたのでしょうか。
起業するとしても「これを仕事にしたい」という明確なものは何もなく、ただ漠然と定年後を意識するようになったのですが「定年である60歳が見えてくる前に、次のステージをつくる準備をした方がいいのでは」という思いがありました。
そこで、まずは「55歳で会社を辞める」と、明確に退職時期を決めました。
起業に向けてなにか具体的に行動しようとしていたわけではないのですが、退職後の次のステップに早めに踏み出すために、定年から逆算して準備を始めたかったのです。
その間に自分のやりたいことを形にしていけば、もっと広げていけるのではないかと考えました。
Q:そこから“片付け”にたどり着いたのですね。
はい。じつは、私は片付けが大の苦手で…家がずっとぐちゃぐちゃだったんです(笑)。
「何か新しいことを始めるにしても、この状態のままじゃ前に進めない」
そこで「まずは暮らしを整えよう」と思い立ち、地域の片付け講座に参加したんです。これが想像以上に面白くて、すっかりハマっていました。
片付けを続けるうちに、家事はどんどんラクになり、暮らしのストレスも激減し、気づいたら、整理収納の講師資格まで取得してしまうほどのめり込んでいたんです。
その後、コロナ禍で在宅勤務が主流になりましたが、おうち時間が長くてもまったくストレスを感じないほど暮らしが整っていました。
そして、片付けが進むにつれて家事がどんどん効率化されていった経験から、時短家事についても学ぶようになりました。こちらもとても楽しくて、講師資格まで取得しました。
そんなことがあって「片付けが大の苦手だった私が、暮らしを整えることに成功できた。この経験を活かして、同じ悩みを抱える誰かの力になれるかもしれない」と、ふと気づいたんです。
これが、私が”起業で何をしたいのか”を明確に意識しはじめた原点です。
Q:ご家族や周りの反応はいかがでしたか?
じつは…最初の頃は、ほとんど反応がなかったんです(笑)。
40代後半で起業を意識し始めて、整理収納アドバイザーと時短家事コーディネーターの資格取得の勉強に励む私の姿を見ても、家族からすれば「また新しいことを始めたのね」くらいの感覚だったと思います。
娘たちはすでに家を出ていましたし、夫も、長い間子育てに専念していた私が新しい学びを楽しんでいる、という受け止め方でした。
とくべつ応援もありませんでしたが「本気で起業するつもりなの?」という心配の声も、まったくありませんでした。
◾️「最初の一歩は社内から」副業としてのスタートが、起業の確かな土台に

Q:資格を取ってからは、どのように実践されていったのですか?
整理収納アドバイザーと時短家事コーディネーターの資格を取得した当時は、まだ会社員でした。
ですが「私が学んだことは、きっと会社の仲間にも役立つはず」 と、思い切って上司に相談してみたんです。すると、ありがたいことに背中を押してもらえて、社内でセミナーを開かせてもらえることになりました。
ちょうど副業が少しずつ広まり始めた時期で、会社が私の挑戦を前向きに受け入れてくれたことは本当に大きな転機でした。
この取り組みのおかげで、私の活動に対する理解が社内で自然と広がり「応援してくれる空気」が育っていったんです。
社内でのセミナーを通して、自分の話がどれくらい役に立つのか、どんな反応が返ってくるのかをリアルに感じることができましたし、そこでいただいた評価が「私にもできる」という確かな自信になりました。
今の時短家事や男女共同参画に関するお仕事の土台は、まさにこの時期に作られたと言っても過言ではありません。
そして、いきなり起業に踏み切るのではなく、 会社員として収入を保ちながら “試運転” ができたことは、精神的にも実務的にも大きな安心材料となっていました。
この時期に繋がったご縁は今でも続いていて、ありがたいことに退職後も「井上さんにセミナーをお願いしたい」と声をかけていただけることがあります。
50代の起業、経験が“共感力”に変わる!
誰かの気持ちに深く寄り添えるのは、同じような痛みや葛藤を自分自身も経験してきたからこそ。 井上さんの仕事の根底にある“共感力”は、これまでの人生で積み重ねてきたリアルな体験そのものから生まれています。
◾️過去の痛みが、寄り添う力と仕事の強みに
Q:これまでのご経験は、どのような場面で今の事業に活きていますか?
電子レンジの商品企画・マーケティングを担当しながら、大きなプロジェクトに関わってきた会社員時代。そのキャリアは、一見すると今の仕事とは遠いように思われるかもしれません。
でも、誰よりも早く“最初の企画書を書く”という役割を担っていた経験が、ゼロから形を生み出す力や、物事を構造的にとらえる視点を自然と育ててくれたんです。
そして何より大きかったのが「仕事と子育ての両立」という壁に、真正面からぶつかった経験でした。
フルタイムで必死に働きながら、家事と子育てに追われる毎日。なかなか周囲にも弱音を吐けず「どう働けばいいのか」「どうしたら暮らしが回るのか」と、ずっと自分に問い続けてきました。
「次の娘たち世代には、あんな大変な思いをしてほしくない」
その強い願いが、時短家事の資格を取ったり、男女共同参画について発信したりする原動力になりました。
セミナーでは、そんな私の実体験を交えながら、受講者の方々と同じ立場の目線でお話しするようにしています。
痛みや苦しみ、リアルを知っている今の自分だからこそ、人の感情に訴えたり、伝えられることがあると思っています。
オンラインでつながりながら、一緒に進めた片付け。画面越しでも、整った瞬間の笑顔と喜びが伝わってきます。
そして、今のメインである片付けサポート。
自分自身、片付けが苦手だったという経験があるので「やらなきゃと思うのに動けない」「片付けてもすぐリバウンドしてしまう」という、お客様が苦しくなるポイントや立ち止まってしまう瞬間の気持ちが痛いほど分かるんです。
だからこそ「マインドが変わるまで寄り添う」 「効果が出るところまで伴走する」スタイルが自然と育っていきました。
ただ正論を伝えるのではなく、お客様が自分で「やってみよう」と思える状態になるまで、丁寧に寄り添うことを大切にしています。それが結果として、大きな変化や喜びに繋がっていくんですよね。
こうして振り返ってみると、一見バラバラに見えるたくさんの経験が、実は一本の線のようにつながり、今の仕事の大きな強みになっているんだと思います。
お客様に寄り添うことが、仕事につながる。起業塾で得た揺るがない軸

Q:起業に向けて準備を進める中で、井上さんが直面した一番大きなハードルは何でしたか?
「起業して、自分が本当にお客様からお金をいただけるのだろうか」という不安がありました。
会社員として長く働いてきたので、自分の力だけでお金を稼ぐという経験がゼロだったんです。サービスを提供して、その対価としてお金を受け取るイメージがどうしても湧かなくて…。
正直、最初の頃は「お金をいただくって、何かを売りつけているみたいで申し訳ない」というモヤモヤもありましたね。
Q:その気持ちをどうやって乗り越えていかれたのですか?
一番大きな転機になったのは、起業塾での学びです。
「本当に起業するなら、感覚ではなく確かな知識を身につけたい」 という思いから、半年ほどかけてビジネスの基礎をしっかりと学びました。
そこで出会ったのが 「ビジネスはお客様のためにある」 「お客様の課題をどう乗り越えてもらうかだけを考える」 という言葉。 この考え方が、私の価値観を大きく変えました。
最初の頃はどうしても「対価=売りつけること」のように思えてしまって、どこか引け目を感じていたのですが、この考え方に出会って「自分がいくら稼げるか」ではなく「目の前の方のお役に立てるかどうか」に意識を向けながらお客様と真剣に向き合えるようになりました。
そして「この方のために、本気で向き合おう」と思って提供したものが、心から寄り添い、責任を持って関わった対価として返ってくると捉えるようになりました。
Q:“自分がお金をいただく”という意味でも、覚悟や工夫があったのですね。
そうですね。ゼロから事業を始めるなら、まずは私自身が“学ぶ側”として、誰かに“お金を払って学ぶ”経験をすることが必要だと私は思っています。
実力がないままでは、誰からもお金はいただけません。だからこそ、資格を取ったり、起業塾で学んだり、自分への投資を覚悟して続けました。
学べば学ぶほど、自然と実力がつく。そしてその結果として、お客様に信頼していただける。その積み重ねが、起業後の立ち上がりをスムーズにしてくれたと思います。
そして「お客様の悩みに寄り添い、その解決のために行動することが、巡り巡って仕事につながっていく」というマインドは、今の私の活動の軸にもなっています。
Q:起業してから大切にしていることはどんなことですか?
収入よりもまず “目の前のお客様が心から大満足してくださること” に意識を向けることです。
会社員時代、大企業で働いていた頃は、ユーザーの声が届くまでにどうしても距離がありました。
企画した商品が市場に出るまで長い時間がかかりますし、実際に喜んでいただけたのかどうか、肌で感じるまでにもタイムラグがあるんですよね。 でも今の仕事は、お客様の喜びも、お困りごとも、すぐその場で返ってきます。
エンドユーザーと直接つながれるのは本当にありがたいことですし、幸せな働き方だなといつも感じています。
だからこそ「自分本位ではなく、お客様が満足するかどうか」を最優先にすることが、今の私の軸になっています。
これまでの経験を強みに変えて、起業という新しいステージへ
井上さんの事業が支持されている理由のひとつが“共感をベースにした伴走スタイル”です。
過去の経験をただ語るのではなく「同じ思いをしてきたからこそ分かる」という寄り添いの姿勢がお客様の信頼に繋がります。
こうしたサービスを生み出せるのは、人生経験を積んできた50代・60代の方々ならではの強みなのではないでしょうか。
あなたの経験から生まれる「共感」や「気づき」も、きっと誰かの支えになり、その人の人生を前に進める力になるはずです。
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コンサルタント 河本扶美子(プロ50+運営/株式会社ファーストブランド代表)が、相談者様の課題に合わせて、事業計画や資金調達の方法、インターネットの活用方法など、50代・60代ならではの経験値や年齢を活かした解決方法をアドバイスさせていただきます。