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【起業事例】60歳で設計・品質保証・環境保全のコンサルタントとして起業。企業の品質改善をサポート

インタビュー

定年退職後の60歳でISOを中心とした品質マネジメントのコンサルタントとして独立した笹島洋幸さん。一律に「OB」扱いされることへの抵抗感、人の役に立ちたいという思いがあったと言います。

笹島洋幸プロフィール
1984年 武蔵工業大学・機械工学科卒業。
1986年 東京工業大学大学院・理工学研究科生産機械工学専攻修了(工学修士)。同年、株式会社東芝入社。原子力発電所の設計・品質保証などに従事。
2016年 東芝電力検査サービス株式会社(現・東芝検査ソリューションズ株式会社)入社
2020年 同社を定年退職。現在マネジメントシステム審査員、コンサルタントとして活動

23歳で起業に興味を持ち、定年退職目前の50歳を過ぎてから具体的に意識をするように

Q:起業を考えた年齢、実際に起業した年齢についてお聞かせください。

私が起業したのは60歳、現在61歳なのでちょうど1年強になります(2021年8月時点)。

「ゆくゆくは起業を」と考えたのは学生だった23歳の頃。アルバイトでお世話になっていた自営業の方から、「一度自営業を経験してみなさい。自営業を経験したら、見方も生き方もガラッと変わるよ」と言われたことがきっかけです。この時、自分でビジネスをする選択肢もあるのだと気かされました。

しかし、具体的に起業を考えはじめたのは50歳を過ぎてからで、自身の定年を意識した頃です。当時、勤めていた東芝では定年延長という制度もありましたが、「再雇用という形で会社に残るよりも、いったんキャリアをリセットした上で自分の実力で勝負してみたい」という思いがわいてきました。後任の人事などの問題もあり会社側との調整の末、満60歳を迎えた2020年4月末に定年退職し、「笹島技術士事務所」を開設しました。

企業に品質保証の考え方を伝えていきたいとの思いで、コンサル業務と認証審査業務を展開

Q:主な事業内容を教えてください。また、起業時から変わりましたか?

事業は、「コンサルティング業務」と「認証審査業務」の二本柱です。

コンサルティング業務は、設計や品質保証・環境保全などの観点から中小企業を中心にコンサルティングを行っています。ある特定の機器・設備の設計といった個別技術に関するものではなく、設計プロセス、品質マネジメントシステム(QMS)、環境マネジメントシステム(EMS)といった「業務プロセス」の構築、改善をサポートしています。

現在、顧問契約を結んでいる企業では、各社月4日程度のコンサルティングを行っています。会社員時代に社内教育にも携わって来た経験を活かし、設計管理や問題が起きた時の原因究明、再発防止対策の実施などが苦手な企業に対し、その考え方や具体的手法などをコンサルティングできたら、との思いで取り組んでいます

「認証審査業務」は、外資系の認証機関との契約の下、QMS(ISO9001)やEMS(ISO14001)などのマネジメントシステムの認証審査を行っています。

労働安全衛生マネジメントシステムOHSMS(ISO45001)の認証審査業務も現在準備中です。企業が「ISO9001認証取得」などと宣言するためには、LRQAなどの認証機関による審査に合格しなければならず、私はその認証機関の審査員としてその審査業務を請け負っています。

50歳を過ぎてから「人の役に立ちたい」と強く思うように。協力企業から誘いを受けたことも起業の後押しに

Q:起業をしようと思ったきっかけ、理由についてお聞かせください。

会社員時代に、協力企業を訪問する機会が多くありました。その際、設計プロセスが貧弱であるために設計の最適化ができていなかったり、品質保証・品質管理の専門的な知識を有した人材を育成できていないことから、問題の原因を分析し再発防止策を講じることができていない企業をたくさん目にしてきました。

設計や品質保証・品質管理などの基本概念を理解できれば、おのずと良い設計・良い品質の製品やサービスを世に送り出すことができるはずです。そこで私自身がコンサルタントとしてサポートすることで、その企業の設計プロセスや品質マネジメントシステムなどの改善に貢献でき、最終的には社会貢献につながるのではないかと考えました。

上記の想いは歳とともに募っていき、50歳を過ぎてからは、明確に「人の役に立ちたい」と思うようになりました。ただ、そのために独立起業するには相当な覚悟が必要でした。

定年が近づいたときに、協力企業の役員の方から「うちの顧問になってもらえないか」と言われたこと、QMS審査に来ていた認証機関の審査員から「うちに来ないか」と誘われたことが重なり、起業してもそれほどのリスクを冒さず生計が立てられるのではないかと判断しました。

もともと務めていた企業に雇用延長・再雇用として残ることは可能でしたが、一律に『OB扱い』されることに抵抗感がありました。「まだまだ自身のスキルで勝負できる」という、あきらめの悪さからくる何かがわだかまりのように残っていました。また、余暇を利用した副業も禁止されていたことから、「このままでは、一生自分の思い描く道に進むことができない」と判断したため、起業へと踏み切りました。

品質保証部でのキャリアを生かし、設計も品質も考慮したコンサルティングができることを自身の強みに

Q:事業内容をどのようにして決めましたか?

品質保証部でのキャリアが長かったことから、この部分を「売り」にしようと決めました。

ただ、品質改善のみのコンサルタント業務はあまりニーズがないため、大学で学んだ工学技術や会社員としての設計経験を生かし、技術士の資格を取得しました。品質管理まで気にする設計者はあまりいないので、間口を広くして「設計だけでなく品質も議論できるコンサルタント」になれば、私自身のブランディングになり、強みになるのではないかと思いました

自身のスキルアップが市場価値の向上につながると考え、売り込むための戦略として資格を取得

Q:起業すると決めてから、まず実践したことは何ですか?

会社員時代から、将来に役立つ研修や勉強会には積極的に参加していました。

起業を具体的にイメージするようになってからは、自身のスキルアップが市場価値の向上につながると考え、売り込むための戦略の一つとして資格取得に取り組みました

品質保証部に在籍している時に「QMS審査員補」の資格を取りました。加えて、設計技術者としての経験をきちんと形にするためにをきちんと形にするために、機械部門の技術士を取得しました。

最近では、環境マネジメントシステムについてもコンサルティングや審査ができるように「EMS審査員」資格取得に向けた教育を受けるとともに、危険物取扱者などの資格も取得しました。
現在は、総合技術管理部門の技術士と環境管理士の資格取得に向けて準備中です。

勤務先のネームバリューではなく、個人ブランドとしてどう売り込み、信頼を得るかが大きな課題

Q:起業して一人で活動し始めたとき、不安はありませんでしたか?

まず、個人ブランドの弱さが不安要素でした。これまでは勤務先のネームバリューで信用を得ることができましたが、起業してからは「笹島洋幸」という一人の人間として見られます。どうやって名前を売り込み、自身を信頼していただけるかが大きな課題でした。

また、会社員の場合は体調不良で休んでも代わりがいます。でも、独立するとすべて一人で対応しなければならないので、健康管理についても特に気を付けています。

会社員時代は自身の役割のみに専念できましたが、起業すると今まで専門の部署が担っていた経理処理なども自分で処理しなければならないので、頭を悩ませています

一匹おおかみとなり、現実の厳しさを知っている「起業の先輩たち」の言葉に勇気づけられた

Q:起業時のエピソードを教えてください。

すでに起業している先輩方の「信念を持ち、目標に向かってブレずに進めば道は開ける」といった言葉に勇気づけられました。一匹おおかみとなり、現実の厳しさを知っている先輩方に温かく見守っていただけていることは、本当に心強く、自分は恵まれているなと感じています。

仕事の成果という面では、起業当初からコンサルティングを行ってきた企業に出向いた際に「従業員の反応や意識が変わってきているな」と、手応えを感じた時はうれしかったですね。まだまだ道半ばですが、わずかながらでも達成感を感じながら進めるというのはモチベーション向上ややりがいにつながります。

また、クライアントに品質保証などのコンサルティングを行った際に、「今の話は大変ためになるので、是非、うちの従業員全員に教育してほしい」と言われたことがあります。自分の存在価値を証明されたようで、達成感を得られると同時に非常に大きな自身につながりました。 

起業により、小さいながらも船の船長のような充実感を味わっている

Q:起業はご自身にとって良い選択肢でしたか?また今後の展望をお聞かせください。

私は、もともと困っている人を見ると放っておけない性格で、勉強会やコンサルティングを通じてクライアントに喜んでもらえるたびにモチベーションが上がっています。

会社員時代は、組織の一部として与えられた使命に従い業務を遂行することが中心で、自身の提案が実現できないことにストレスを感じることもありました。

起業してからはすべてにおいて自身の判断で物事を決定できるようになり、小さいながらも一隻の船の船長として舵取りができる充実感を味わっています

今後は認証機関との契約を維持し認証審査という安定した業務量を確保しながら、コンサルティングを行うクライアントをさらに増やしていきたいですね。

数を伸ばすためにもホームページを開設し、コラムなどを通じて事業理念や自身の想い、クライアントへのメッセージなどを発信し、新たなクライアントとの接点を作っていきたいと考えています。

新たな分野に挑戦するよりも、自分が培ってきた知識を社会に還元していく気持ちで起業を

Q:起業において大切なことは何ですか?

起業する際は、自分が何をしたいのか、どんなことを成し遂げていきたいのかを明らかにして、モチベーションを高く持つことが大切と思っています。

というのも、新しい分野に挑戦するには一から学ぶ必要があります。特に50歳を過ぎてからの場合、時間的にもリスクが高いため、社会に何を提供できるか、他者より何が優れているかを見極めて進出する分野を検討すべきでしょう。

収入も大事ですが、人生の終盤に差し掛かった身としては、社会とどう関わっていけるかが大きな意味を持つと感じています。せっかくなら今までの人生で培ってきたスキルを生かし、社会に還元するという想いで起業していただきたいです

自身のセールスポイントを明確化し、それを武器にして戦う。その上で、今まで積み上げてきたものに時代やニーズに合わせた情報や知識を加えていきながらスキルアップを図ることが大切です。

定年がなく、生きている限り好きな仕事をずっと続けられることは本当に幸せ

Q:起業を目指す方にメッセージをお願いします。

今まで企業の看板を背負って生きてきた人にとって、個人ブランドで業務を始めるのは非常に不安であり、全く知らないところに飛び込み営業をするようなものです。

自分のビジネスを少しでもうまく進めていくためには、今まで培ってきた人脈に加え、協力し合える仲間を作ることが重要です。ただ、損得勘定で打算的に考えると信頼形成につながりませんし、きっとお付き合いも長続きはしません。他者から与えられることを期待するのではなく、相手を尊重し、自ら尽くしていく。そのような生き方ができる人間になることも大切だと思います。

起業した後は事業を継続していくために、営業活動や情報発信のノウハウなど、それなりに知識を蓄えていく必要があります。経理面では、月々の収支管理、税務署への申告など、日頃からコツコツこなしておくべき業務が出てきます。経験がないものは勉強して身に着けていかなければなりません。

また、起業当初は収入ゼロという期間が続くことが予想されます。事業内容によりますが、起業にあたっての初期投資、そして最低1年間は生活できる資金を用意しておきましょう。毎月、決まったお金が入ってくるわけではないので、クレジットカードの審査が厳しくなるなど生活が一変する可能性もあります。その影響をまともに受けるご家族の理解を得ることも欠かせません。

やるべきことや、心得ておくべき事柄はたくさんありますが、起業すると定年がない点は最大のメリットです。自身が生きている限り、好きな仕事をずっと続けられるのは幸せなことです。ぜひ後悔のない人生を選択していただきたいと思います。

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