【起業事例】50歳で個人事業主から株式会社設立。時代の流れを読み変化を恐れずに前に進む
インタビュー
ファイナンシャルプランナーとして50歳で個人事業主から株式会社化した増川昇さん。保険の取り扱いやセミナーを軸として親子二人三脚で全国展開を目指しています。
増川昇 プロフィール 1961年神戸生まれ2男2女の父。国内損保・外資系生保の代理店を経て株式会社リスクマネージメント神戸を設立。資産運用・住宅ローン・生命保険などのファイナンシャルプランニングに関する相談を年間1000件以上、お金に関するセミナーも年間50件以上受ける。プライベートでは地域の民生委員などの経験がありボランティアにも熱心に取り組む。
祖父も保険業、29歳で保険の代理店をスタート
これまでの道のりについてお聞かせください。
祖父が保険業に携わっていたこともあり、私自身も29歳の時に個人事業主として保険の代理店を始めました。当時は、保険の販売は個人でできた時代です。市場でいうと八百屋さん、魚屋さん、肉屋さんのように、それぞれが自分のやり方で商売をしていました。 しかし、十数年前からは競争力と市場のシェアを高めるために、保険代理店制度の効率的かつ効果的な運営を探り、個人保険代理店の吸収合併や統廃合、保険代理店の法人化を推進する動きが業界全体で加速しました。 業務の煩雑化、複雑化も進み、今後も大切なお客さまに安心を提供するためには、「今までのように個人商店としてやっていくのは難しいのではないか」「経営を安定させ、かつサービスレベルを向上させるためには、法人化がすべきではないか」と考えるようになりました。 幸いなことに、息子が後継することが決まっていたので50歳の時に法人化し、大切なお客さまをこれからもお守りしていく強い思いで、この事業を最後までやり通そうと決意しました。
時流を柔軟に受け入れることが大切
株式会社設立を考えるようになったきっかけをお聞かせください
以前は、知り合いからの紹介で保険に入る人がたくさんいました。内容うんぬんよりも「信頼している人なので、間違いないだろうと思った」という声もあり、すすめられるがまま、一社専属の営業マンなどを通じて保険に加入した人は少なくないと思います。 その結果として、資金が必要になって保険を現金化したときに初めて「自分たちが思っていた内容と、保険をすすめてきた知り合いが言っていた話に乖離(かいり)があることに気づいた」というケースも多く見てきました。 長らく、一社専属の営業マンが販売を行っていましたが、2000年代に入った頃から複数の保険会社の商品を扱う保険ショップが台頭しました。 旅行代理店に立ち寄るような気軽さで、保険について考えている人が気になるパンフレットを自由に取って好きなタイミングで店に足を運ぶ。保険ショップは、「必要があればお話をお伺いしますよ」というスタンス。つまり「待ちの営業」が主流となってきました。 かつてのように、保険やお金のことを義理や人情で決める時代ではなくなったのです。 これからは、人と人とのつながりだけでなく、企業の信用度、すなわち株式会社の設立が重要なポイントだと強く思いました。
法人化により対外的な信用度もアップ
法人化にむけて具体的にどのようなことに取り組まれましたか?
今までは、店舗を持たずに保険代理店事業を行っていました。しかし、株式会社を設立しても拠点がないのでは私の考える企業の信用にはつながらないと思ったので、拠点を用意することにしました。 オフィスを構えて事業を大きくするために銀行から借り入れをしたのですが、その時に実感したのが、法人登記を済ませていると借りられる額の大きさも違うということです。 法人を設立するということは、対外的な信用が増し、責任が増すんだと痛感した瞬間でした。 もちろんその分の固定費はかかりますが、それが今後に生きてくると信じていたので、オフィスを持つことに迷いはありませんでした。
セミナー開催で参加者との縁を結ぶ
現在の事業の主軸について、また事業を行う上でのお考えをお聞かせください。
主軸は保険の販売とマネーセミナーです。 昨今のニュースで、お金にまつわるさまざまなことに漠然とした不安を持っている人も多いと思います。 「老後資金に不安がある」「賢いお金の使い方をしたい」など知りたいことはあっても、一対一、つまり自分一人で話を聞くのは荷が重いと感じる人が多いように思います。 そのため、たくさんの人が同時に受けられるオープンセミナーという形のほうが気軽に受けられるのではないかと考え、まずはお金のことを身近に感じられるマネーセミナーを企画し、定期的に開催しています。そして、もっと深く知りたいという人には個別相談を実施するなど、プランをご提案させていただくこともあります。 保険代理店としてこの業界で生き残っていくためには、他社との差別化が必要だと考えます。 例えば、自動車ディーラーで車の保険に入っても、保険会社の看板が出ている代理店で入っても、保険会社で入っても内容はほぼ一緒です。保険は事故が起こらないと活躍しないものですので、安全運転を心がけ無事故で過ごしてきた人からすると「保険の値打ちってなんだったんだろう」という声があるくらい、差別化がないのです。 そのため、保険を販売することを目的にするのではなく、老後資金の不安解消や、夢や目標を実現するための賢いお金の使い方などをご提案し、二人三脚で歩むアドバイザー的な役割でありたいと思っています。 何か困ったことがあれば気軽にご相談いただけるような雰囲気を大切にし、セミナー参加者の価値観や将来設計に合わせた的確なご提案と、継続的なアドバイスを私の事業の強みにしたいと考えています。
変化に富んだ毎日はとても楽しい
現在、仕事にはどのような思いで取り組んでおられますか?
経済ニュースを見ているだけで、マネーセミナーでお話ししたいと思えるネタがたくさん出てきますので、毎日が変化に富んでいて充実しています。 日々の生活の中でネタをインプットし、知識や情報をセミナーでアウトプットするのですが、受講者のみなさんと「何を、どのように共有しようかな」と考えているので、常にハリがあってわくわくします。 セミナーに応募して受講してくださる方々は、すごく前向きに話を聞いてくださるので、こちらもそれに答えたい。熱い気持ちをもって向き合おうという思いになりますので、とてもやりがいを感じています。
目標は全国展開。時代は変わっても心は変わらない
今後の展望をお聞かせください。
今は京阪神間での活動ですが、今後は会社の規模を大きくして息子と二人三脚で全国展開していくのが目標です。 おかげさまで、長くお付き合いをさせていただくお客さまも増えてきました。でも、転勤で地方に行かれた方などは連絡を取ることはあっても、なかなかお会いすることができません。全国に拠点を設けて、こういったお客さまと定期的にお顔を合わせたいと思います。 私の仕事は、競争相手がたくさんいます。だからこそ、時代が変わってもお一人お一人を大切にする気持ちは変わらず持ち続けていたいと思います。
大切なのは目標に対する執念。挑戦する気持ちを持ち続けることで未来は輝く
これから起業を目指す人にメッセージはありますか?
起業の一番の楽しさは「すべて自分で作れること」です。 会社員のうちは、やりたいことがあっても、必ず上司や社長のフィルターを通さなければならないでしょう。しかし起業では、すべて自分で選択し挑戦していけるのでとても楽しいと思います。 もちろん、大変な部分もあります。会社に勤めていれば「出勤すればお給料がもらえる」「病気で休んだら福利厚生がある」と、守られている部分も多いはずです。起業すると自分が資本になるので、守ってくれるものはありません。 自分で自分を支えていくためにも、目標に対する執念が必要です。挑戦する気持ちを持ち続けていれば、間違いなく充実した日々を送れると私自身は感じています。 「定年したら、今までのように活躍できないのでは…」と不安にかられ、あきらめの気持ちが大きいかもしれませんが、私はそうは思いません。 今まで積み重ねてきた経験が役に立って、生かす場所、輝ける場所はたくさんあります。 これまでは、子育てなど家族のことを第一に考えて仕事をしてきた方もいらっしゃるでしょう。これからは自分の人生を楽しむために、思い切って羽ばたいてみてはいかがでしょうか。
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