【起業事例】大手電気メーカーのグループ企業を早期退職し、57歳で起業。人材育成を支援する新しいビジネスモデルを構築中

インタビュー

2018年に「アクティブ・コーチング・システム」代表として独立した沖本能道さん。32年間勤務した会社を辞めて初めて“起業”を意識したといいます。予備知識ゼロの状態から、退職後わずか5カ月で起業できた理由とは?

沖本能道(おきもとよしみち)プロフィール 日本大学理工学部精密機械工学科卒業 1986年〜2018年 日本電気エンジニアリング入社(現NECプラットフォームズ) ・構内交換機向け本体ソフトウェア開発 ・コールセンターシステム構築プロジェクトリーダー ・クレーム再発防止、未然防止改善対策コンサルティングリーダー ・特許委員、ISO9001社内監査員、JIS C 6950監査員ほか 2018年8月 株式会社アクティブ・コーチング・システム設立 2019年   思考力拡張型AI(人工知能)「コーチングエンジン®システム」開発、特許取得 2021年  「コーチングエンジン®システム」クラウド版を開発

自分がやりたい仕事が実践できる再就職先がなかったから“起業”を選択

Q:起業を考えはじめたのは、どのようなきっかけからでしょうか?

2018年3月に57歳目前で、それまで働いていた勤め先を早期退職したのは、事業見直しによる人員整理など会社都合によるものでした。 退職後は、会社から紹介された再就職支援会社やハローワークで再就職先を探したものの、自分のやりたいことができる募集がまったく見当たらなくて。私が希望していたのは、オペレーターの離職率が非常に高いといわれるコールセンターの人材サポートシステムの開発事業に取り組んでいる企業でした。 前職では、長年システムエンジニアとして電力事業者や携帯電話会社などのコールセンターを担当し、システム開発に併せて人材育成体制の構築も手がけてきたからです。 その経験とノウハウを次の職場でも生かしたい。既存の求人にそうした事業に関わる仕事がないのなら、新規事業として採用してくれる企業はないだろうか。 そんな要望を再就職支援会社の斡旋担当者に伝えたところ難しい顔をされて(笑)。代わりに「そこまでやりたいことが明確であれば、起業を検討されてみては」とアドバイスを受け、そこで初めて“起業”が自分の中で大きな選択肢となったのです。

商工会・商工会議所、行政が開催するセミナーで初めて起業のイロハを学んだ

Q:起業に向けて取り組んだことについて教えてください。

私自身32年間ずっと会社員生活でしたし、両親は公務員でした。身内で起業をした者もおらず、最初は「起業って、何から始めればいいの?」という状態でしたね。 そんな折、家族が市の広報誌で「柏市しょうなん創業塾」の募集広告を見つけ、私に参加を勧めてくれたのです。千葉県柏市の商工会・商工会議所が市の協力のもと開催している全5回コースの起業セミナーで、中小企業診断士や社会保険労務士の講師陣から、創業の心構えから事業計画の立て方、資金調達などについて幅広く教えてもらえる。柏市を拠点に創業予定あるいは創業して間もない人が参加できるものです。コースを修了すると、日本政策金融公庫が提供する、創業資金の融資制度が有利に利用できるなどの特典もついています。 受講中、講師や商工会・商工会議所の方々から教わったことで印象的だったのは、創業資金についての考え方でした。 かつての私のように起業について知識が浅いと、前職の退職金や貯金の中から創業資金を捻出しようとします。ですが塾では「手持ちの予算を基準に事業内容や規模を決めるのではなく、まずはやりたい事業の全体像を描く。それに合わせた予算に手元の資金が足りなければ融資を受ける選択をすべき」と教えられた。 私は「起業とはそういうものなのか!」と目からうろこが落ちる思いで、融資を受けてみようと決意しました。柏市沼南商工会からの推薦をいただけたこともあって、日本政策金融公庫と都市銀行から合わせてAI人工知能開発費の融資を受けることができました。

プレッシャーを向かい風にせず、追い風にすべく行動していく

Q:起業したばかりの時期に多額の融資を受けたことはプレッシャーになりませんでしたか?

銀行の融資査定が厳しい時代ですから、応援してくださった柏市沼南商工会の方も、起業実績がなかった私の事業に対する融資額の大きさは、「前例がない」と驚かれていました。 私としては、融資が決まるまでの期間、毎日のように銀行から電話で事業内容について詳細な説明を求められていました。きっと断る理由を探しているのだろうと半ばあきらめていたんです。 しかし、実際に融資が決まったということは、それだけ多くの企業がコールセンターの現場で起きているオペレーターの離職や、クレーム対応などの問題を解決できるシステムを求めている、と銀行側が判断したからではないでしょうか。 私の事業に、銀行からも可能性を見いだしてもらえたおかげで、起業の翌年には思考力拡張型AI(人工知能)「コーチングエンジン®システム」を開発、特許も取得できました。これは、コールセンターにおけるオペレーターの負担を軽減し、顧客満足度を高めるアプリとして弊社の主力製品となりました。 ただ、その後まもなくして社会情勢はコロナ禍に突入し、積極的に営業活動ができない状況になりました。融資を受けているぶんプレッシャーもありましたが、それを事業運営の向かい風と捉えず、追い風にすべく地道に行動しました。 スポーツアスリートに例えるなら、そういう時期こそ本戦に備えてパフォーマンスを強化するためのオフシーズン・トレーニングに勤しむといったイメージです。 具体的には、2020年は開発したシステムの顧客ターゲットを絞り込んでカスタマイズし、システムをクラウド対応できるようにするためのリメイク作業にも着手。2021年には「コーチングエンジン®システム」のクラウド版を開発することができました。 これは経済産業省による中小企業向けの「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」に申請して得られた予算で行った事業です。

成長プロセスにおける“5つの壁”を意識することで意欲を維持できる

Q:起業においてモチベーションを落とすことなく、成長していける方法について、詳しくお願いします。

私はスキーの指導員も長年続けていて、初心者向けの指導経験から見つけた法則を体系化し、オペレーターの教育プログラムとして「コーチングエンジン®システム」に取り入れています。まずは、この成長プロセスモデルの説明をさせてください。 例えば、オペレーター未経験だった新人が、他者に業務を教えられるようになるまで成長するには、「知識→行動→気付き→技術習得→体系化」の順に〝5つの壁〟を想定した指導が必要だと考えています。 業務について「知らない」ところから始まり、まずは「知る」ことで〝知識の壁〟を越えていく。次は知ったことで見えてきた「やるべきこと」を「やってみる」ことで〝行動の壁〟を越え、行動して気付いた「足りない部分」に必要なフォローをすることで技術力が向上していく、といった流れです。 こうしたプロセスにおいて「コーチングエンジン®システム」では、各オペレーターの個性や強み、理解度などに応じて人工知能が的確なアドバイスを提案。オペレーター自らもそのつど考えて対応する習慣がつき、結果的に組織として離職率の改善と新規採用者の即戦力化を実現することが可能となります。 ひとりで起業して不安や焦りに陥った場合も、このモデルに自分の状態を照らし合わせてみるといいと思います。 不安なのは知識が足りないためか、または行動の仕方を知らないからなのか。何に対して不安なのかを〝見える化〟することで、次にやるべきことが分かりやすくなります。 私はいつもこの法則を意識しているので、問題が起きたときも「時間はかかっても何とかなるだろう」と思え、むやみに落ち込むことはありません。

自分の中の〝こだわり〟を自らカタチにする喜びが起業にはある

Q:最後に、今後の目標や起業を目指す人へのメッセージをお願いします。

コールセンターを利用するユーザー(顧客)の満足度を高めるためにも、オペレーターたちの負担軽減と、効果的な人材育成を実現する支援体制のビジネスモデルを、広く提案していくことが目標です。 コロナ禍が続く中での課題は、こうしたコールセンターの問題に取り組めていない事業者とのつながりが持ちにくくなってしまっていること。多くの人と直接会う機会が制限された社会において、どのような営業アプローチが有効なのか。還暦を迎えた私自身も今、夢に向かって走りながら学び、考え、行動を積み重ねる日々です。 起業を考えるとき、誰しも「これで食べていかれるのか?」と悩む瞬間があるでしょう。実際、自分や家族の生活を維持していくためには、お金を稼ぐ必要はあります。ただ私の場合、自分がやりたいことに取り組むことを優先することにしました。(笑)。 そして、独立から3年を経て感じるのは「これをやってみたい!」と思えるものがあるなら、起業してでもやってみる価値はあるということ。 最初からすべてを一人でできる人はいません。知らないことを知っていく、できないことをできるようにしていくプロセスを歩んでいく途上で、自分の中で「これは絶対に譲れない」というものが際立っていく。そんな〝こだわり〟を自らの手でカタチにしていく喜びが、起業にはあると思います。

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