【起業事例】健康なうちは仕事を続けたい。50歳で起業を志し定年後に弁理士として開業。

インタビュー

定年を期に60歳で弁理士として開業した奥村一正さん。人脈の活用とインターネットの活用が起業の肝だといいます。起業のきっかけやストーリーについて聞いてみました。

奥村 一正 プロフィール
1980年~2004年 松下電器産業株式会社 生産技術本部にて、主に、生産設備の開発業務、および特許戦略の企画業務に従事する。
2004年~2014年 特許庁 審査第二部搬送組立にて、任期付き審査官一期生として、主に生産設備の特許審査に従事。
2014年 特許・実用新案・商標・意匠の調査・出願・異議申立などに対応する「奥村一正特許事務所」を設立。弁理士としての活動を開始。

定年後も働き続けるために起業すると決めいていた

起業を考えたのは何歳の時ですか?

50歳まで松下電器産業で主に生産設備の開発業務や特許戦略の企画業務に携わっていました。独立開業については、松下で働いている時から考えていたんですよ。60歳を超えてからも仕事を続けるため、「将来は必ず起業する」と決めていました。
50歳になった時、特許庁が社会人採用を開始し、特許庁の審査官として10年働くと弁理士として独立できることを知りました。「この仕事に就くことで、60歳以降に独り立ちするための準備期間にすることができるのでは」と思い特許庁に転職。審査第二部搬送組立で任期付き審査官一期生として10年間働きました。

起業の数年前から地元での人脈作りをスタート

起業すると決めてから実践したことを教えてください。

「起業するなら関西で」と心に決めていました。私は京都生まれで京都育ちですので、京都には古い友人がたくさんいます。しかし、東京の特許庁で働いていたので、関西での知財方面の人脈がありませんでした。そこで、起業の2~3年前から関西での人脈作りに少しずつ取り組むようにしたのです。

まず、何らかの機会で関西に戻った時は、できるだけ友人に会い旧交を温めるようにしました。また、東京・大阪・名古屋で弁理士研修が開催されていたのですが、東京ではなくあえて大阪の会場まで足を延ばして受講しましたね。そうした日々を過ごすうちに、関西での人脈が自然に広がっていきました。

特許庁での知識と経験値をもとに開業、起業当時は営業で苦労も

起業してから、どのようなことで苦労しましたか?

弁理士の仕事は、日本国内の出願や外国の出願、訴訟など多岐にわたるのですが、私は特許庁で、主に国内の生産設備の特許審査に従事していたので、引き続き生産設備の特許出願を主体にしていこうと決めました。

弁理士ですので自宅を事務所として起業することもできたのですが、迷った末に現在の場所に事務所を借りることにしました。

起業時は、営業がうまくいかず苦労しました。弁理士は信用が第一の仕事ですので、紹介もなくいきなり飛び込み営業をしてもなかなか仕事を依頼してもらえません。

それだけに、初めて仕事を依頼された時の喜びは忘れることができません。記念すべき1件目の仕事は、弁理士研修の懇親会で知り合った方からの依頼でした。起業して間もなくのタイミングで特許出願の仕事を依頼されたので、本当にうれしくありがたかったです。そのお客さまとは、現在もお取引いただいているんですよ。

滑り出しはとても好調だったのですが、その後は受注が続きませんでした。ダイレクトメールを送ったり、飛び込み営業をするなどさまざまな努力を重ねたのですが、なかなか契約には結びつきません。

先輩から資金の備えについてアドバイスをもらったことが支えに

事業が軌道に乗らないことで不安になりませんでしたか?

契約がなく不安になりました。それでも、根拠のない自信のようなものに支えられ「なんとかなるだろう」という前向きな気持ちがあり、メンタル的につぶれることはありませんでした。

実は、松下時代の先輩が私よりも先に起業して成功をおさめていたんです。その先輩から「起業前に2年間は食えるように準備しておけ」というアドバイスをもらっていたので、2年間は、それまでの蓄えなどでやりくりする覚悟をしていました。先輩の成功事例を見ていたこととアドバイスをいただいたことがプラスに働き、起業当初の最も不安な時期を乗り切ることができたのかもしれません。

1件目の仕事を受注した3~4カ月後に、やっと2件目の仕事を受注できました。その後は松下時代の友人からの依頼などもあり、口コミや紹介で徐々に仕事が広がっていきましたね。また、日本弁理士会の運営委員を務めているのですが、その関係で「特許庁時代の経験を話してほしい」とセミナー講師の仕事を依頼されることも増えました。

人脈を広げることとインターネットの活用で集客

起業を成功させる秘訣はありますか?

秘訣とは言えないのかもしれませんが、人脈を広げることは重要だと思います。機会があれば場所を選ばず顔を出し、多くの人と知り合いになっておくことは、起業を成功させる1つの方法ではないのかなと考えています。

起業後はもちろんのこと、起業前からちょっとした飲み会などがあれば、参加して知り合いを増やしておくことが大切ではないでしょうか。

最近は、ホームページを見て相談に来られるお客さまも増えてきましたよ。起業当初は、ホームページを用意していなかったのですが、ある時お客さまから「ホームページがないようでは上司に説明できない」と言われたので、2014年の年末に2~3日かけて自分で制作しました。その後、時代の変化にあわせて業者に依頼して新たなホームページを立ち上げました。ホームぺージは、時代にあわせて作り変えていくことが必要だと気づかされました。

また、2017年にマイベストプロに紹介されたのですが、このweb環境が有効で、うまく集客につなげることができました。今後は、さらにネットを活用した集客に力を注ぎたいと考えているところです。

結果的に、起業して1年後には、仕事がある程度順調にまわるようになったのですが、これは自分で想定していたよりもスムーズな滑り出しだったと思っています。

特許庁の審査官の経験を持つ弁理士の存在は関西では希少だったこともあり、そこを評価していただき依頼へとつながったケースも少なくないのではないでしょうか。そういう意味では、松下電器や特許庁で培った経験や実績が差別化のポイントとなり、起業後にプラスに働いたのではと分析しています。

何でも自分で決められるのが楽しみ

起業してからの生活はいかがですか?

とても楽しいですよ。会社に勤めていた時もやりがいを感じていましたが、それとはまた違う充実感がありますね。

自営業は、何でも自分自身の意思で決めることができ、やりたくないことはやらなくていいという自由があります。これは会社員時代にはなかった喜びですね。

逆に、何でも自分1人で決めなければならないことが自営業の厳しさでもある。また、会社員時代のように多くの人に囲まれて仕事をするわけではないので、孤独感も少なからずある。ですから、困ったことが起きた時は、1人で抱え込まず同業の知人や友人に相談するようにしています。

口コミによる集客が8割、個人事務所ならではの細やかなサービスを心がける

仕事を増やすコツのようなものはありますか。

仕事が増えると、周りの目も変わりますね。「きちんと仕事をしているな」と思っていただくことで、仕事が仕事を呼び良い流れへとつながったのだと考えています。弊所のお客さまの8割は口コミによる集客なのですが、これは一つ一つの仕事に誠実に取り組み、喜んでいただけた結果だと自負しています。

また、弊所のお客さまは、小規模の中小企業のオーナーさまが多く、さまざまな事情を抱えておられる方も少なくありません。そのため、一律に決まりきった対応をするのではなく、お客さまの状況や希望に寄り添える個人事務所ならではの細やかなサービスを提供するよう心がけています

具体的には、打ち合わせの場所や日時をなるべく合わせることはもちろん、出願する発明品はできるかぎり工場に見に行くようにしています。

技術者が特許を取りたいポイントと、私たち専門家が見て「ここがいい」と思うポイントには違いがあります。技術者は難しい技術で特許を取りたがることが多いのですが、私たちの目で客観的に製品を見た時、もっと単純なポイントで特許が取れることに気付くこともあります。そうしたシンプルなポイントを特許にすると強いので、気づいた時は積極的に提案するようにしています。この辺りの勘所に、松下時代や特許庁時代の経験が生きていると思います。

早めの準備と体作りが大切

起業を目指している方へのメッセージをお願いします。

定年後の人生はとても長い。人生100年と考えると40年近くも残っている計算になりますよね。その40年を趣味に打ち込んで生きる方もおられますが、私は健康なうちは仕事をしたいと思っていたので、50歳から準備を始めました。

これから起業を目指される方には、将来自分がどう生きていくのかについて、じっくりと考えるためにも、早めに準備を始めることをおすすめしたいです。

そう考えると健康も大事ですよね。私はいつまでも元気に働きたいので毎朝、出勤前に2kmジョギングをしているんですよ。自営業は体が資本ですからね。

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