【起業事例】63歳で設計技術のコンサルタントとして起業。研修、セミナーを通じて、機械系エンジニアの人材育成に貢献

インタビュー

63歳で設計技術のコンサルタントとして起業した折川浩さん。セミナーや研修を主事業として機械設計エンジニアの育成に熱意を注ぎます。いざというときに備えて自身の弱点を補い、強みをより強化しておくことが重要だと言います。

折川浩プロフィール
1981年 慶應義塾大学大学院工学研究科 機械工学専攻修了
同年、ソニーに入社。民生用、放送業務用映像機器の機構・外装設計並びに 3DCAD、CAE の設計展開活動に従事。
2013年 CAD活用および幾何公差の社内研修講師
2019年 技術士(機械部門)登録、技術士事務所開設

「いつかは独立を」50代の終わりで本格的に起業を意識

Q:起業を考えた年齢と実際に起業した年齢をお聞かせください。

最初に起業を意識したのは40歳を過ぎた頃でしょうか。ソニーに勤め、映像機器の機構・外装設計をしながらも「いつかは独立を」との思いがありました。ですが漠然とした感覚でそのまま過ごし、本格的に準備を始めたのは50代の終わりごろ。定年が現実のものとして見えてきた時期です。

その後、実際に起業したのは2019年で、63歳の時でした。ずいぶんと遅いでしょう?

今は前職のスキルを生かして設計技術の基本や応用に関する研修・セミナーなどを行い、機械設計エンジニアの人材育成に力を入れています。

ホームページの拡充がポートレート代わりに

Q:起業するにあたって準備したことはありますか?

私生活と仕事をきちんと分けたかったので、まずは事務所を探しました。海老名にある現在の事務所は、以前の会社で知り合いだった方の持ち家の一角をお借りしたものです。

昔と違い、開業届などはすべてオンラインで申請できるのがありがたかったですね。ただし、そのためにはマイナンバーカードが必要です。起業を考える方でマイナンバーカードを取得前なら、早めに手続きすることをおすすめします

次に取り組んだのがホームページの拡充です。設計図と実物の誤差をどこまで許容するか決める「公差」の原則や定義、技術士など機械系試験の試験対策資料といった実務や学習に役立つ資料を、起業前の段階から日々更新しています。解説記事を読んで「ためになった。こうしたツールを探していた」と反応があったり「素晴らしい。感激しました」との声をもらったりして、手応えを感じています。

一方で年配の技術関係の方などは「これだけの情報を無償公開しているのか」と驚かれることもあります。

私としては、途中までしか講座内容を書かず「あとはお問い合わせを」という形にはしたくありませんでした。情報発信が業界全体の発展に役立てばいいし「これだけのことを知っている」という私のポートレート代わりにもなる。実際、ホームページ内につくった「ミニ講座」を見た方からセミナーの依頼をいただいたこともあります。

対価への意識の変化「サラリーマンを続けていたらわからなかった」

Q:起業前と比べて意識に変化はありましたか?

独立してからの方が、性格が明るくなりましたね。会社にいた頃は、自分の思い通りに動けないいら立ちや重圧がありました。でも今は自分の責任で自分の考えた通りに行動できる。いい意味で肩の力が抜けて、人柄もフランクになった気がします。

加えて、報酬に対する意識も変わりました。会社員時代は、給料という形で口座に振り込まれるのが40年近く続きました。あけすけな言い方をするなら、放っておいても勝手にお金が入ってくるような感覚でした。何かアクションを起こして、その対価としてお金をもらうという「当たり前」が知らず知らずのうちに、なあなあになっていた部分があったかもしれません

それが独立後は、報酬のありがたみを強く感じるようになりました。同時に、お金をいただくからにはそれだけの満足感を依頼主に与えたいと心を砕き、以前より増して試行錯誤を重ねるようになりました。

仕事は努力するのが当たり前ですが、対価について真剣に考える機会は、サラリーマンを続けていたら得られなかったのではないかと思います。

「正直、いまは50代より頭がさえている」起業が興味の対象を広げた

Q:起業するにあたり、不安に感じることはありませんでしたか?

年を重ねると、どうしても保守的になります。独立ではなく、会社の再雇用に頼る手もありました。でも自分の力でどこまでできるのか試してみたかったし、日本を支える中小企業の手助けもしたかった。もちろん不安はありました。それなりの会社に勤めていたとはいえ、一歩外に出てしまえば「ただのおじさん」ですから。

「裸一貫の自分を支える武器がいる」。そう考えたとき、機械系技術士の国家資格を取ろうと決心しました。国家資格の最難関と言われるだけあり、勉強を始めてみるととにかく難しい。工学系一筋の人生を歩んできたものですから、なかには一度は習った内容もありました。でもすっかり忘れてしまっているわけです。自分がいかに浅いところをなぞってきたのか思い知らされました。

本を買い、ネットで調べ、少しずつ学び直していくのは根気のいる作業でした。年をとると、なかなかエンジンもかかりにくくなるものですから。でも「なにくそ」の精神でがんばりました。

結局、技術士の資格を取得するまでに3度試験を受けています。試験は年に1回だけ。1年間ごとにモチベーションを維持するのが大変ではありました。ですから、その間、電気主任技術者や計算力学技術者、応用情報技術者などの資格も取り、脳を動かし続けるよう努めました。

2回目に落ちたときですか? 確かに落ち込みはしましたが手応えも感じました。あともう少しで手が届くだろうと。ただ、これが5〜6回も続けば気持ちはポッキリと折れていたかもしれません。

技術士の試験には、経済や科学技術の動向などを踏まえて自分の意見を書く論文もあり、そのため多くのニュースを読み、知見を広める必要がありました。興味の対象が限定されていた会社員時代と異なり、脳にどんどん知識の栄養が染み渡っていくようで正直、66歳のいまの方が50代のころより頭がさえている実感さえあります

好奇心による船出。コロナの逆風も「悪いことばかりでもない」

Q:独立1年目の業績予想などはしていましたか?

正直言って、まったくしていませんでした。それよりも好奇心が勝りました。きっと若い時期の独立なら、いろいろと調べて確信を持てる段階になってから進めたでしょう。

しかし、先ほどお話ししたように、なにせ63歳からの起業です。ある程度貯蓄もあるし、思い切って飛び出してみようと。業績のことは走りながら考えればいいか、という感覚でした。

自分なりの準備もして、ホームページも拡充して、技術士の資格も得て……。それでも世間に自分の価値を認めてもらえるのか、もらえなかったらどうするのか、もやもやはありました。でも心配していても始まらないし、何がなんでもまずは3年続けようと。

独立後、ほどなくして新型コロナウイルス感染症が国内に広がり、逆風の中での船出となりました。予定していた対面式のセミナーなどは軒並みなくなり、お世辞にも大盛況とはいえない状態です。それでもホームページを見た方から、ポツポツと仕事をいただくような状況にまでには戻ってきました。

それに悪いことばかりでもありません。「新しい生活様式」の浸透で、オンラインでのやりとりが一般化してきたのは大きな進歩だと考えています。

対面式だと一部の人しか集まれなかったのが、オンラインなら遠方の人もセミナーに参加することができる。相手の反応が分かりにくいなどのデメリットも少しありますが、みなさんがオンラインに慣れた今だからこその「チャンスもある」という気もしています

動き続ける熱量こそが独立の何よりの財産

Q:これから起業を考える人にアドバイスをいただけますか。

とにもかくにも、前もって準備をしっかりしておくことが大事です。

これはわが身の反省を踏まえての忠告ですが、どんな目標に向かっていつから進むか、早い段階で明確に描けているのが一番です。

でもそれは理想であって、現実にはなかなか難しい。ですから「いつか独立したい」という漠然とした目標を持ちながら、いざというときに備えて自身の弱点を補い、強みをより強化しておくことをおすすめします。そうしてつくられた屋台骨は、独立のチャンスが突然巡ってきたときに踏み出す勇気を与えてくれるはずです。私の場合、その「支え」が技術士の資格でした

あとは人脈ですね。それは大事にした方がいい。例えば、会社で嫌な上司がいたとしても「いずれこの人から仕事をもらうかもしれない」と考えると、溜飲(りゅういん)を下げやすくなります。

一方で、とにかく人脈があればいいというものではありません。仕事をどれだけ抱えようとも実力が伴わなければ、期待に添えず依頼主をがっかりさせてしまいます。人脈だけに頼る、という安易な発想は危険。クライアントも自分も不幸になります。人脈を頼ると同時に、自分のポテンシャルを高めておく努力は必要です。

50代からの起業は、情熱をどれだけ維持できるかが要だと思います。私の場合、コロナ禍もありビジネスとして大成功しているわけではないけれど、後悔はないし、やりがいもある。年を重ねても熱量を持ち、能動的でいられることが、独立をしたことの何よりの財産だと感じています。

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